にんげん・せいかつ
Q. 大人になる時間は何時間ですか? (小3、女の子)
A. おねえさん:今、何歳ですか?
女の子:9歳です。
おねえさん:さて、永先生?
永先生:ここにいる大人は皆、子どもです。
おねえさん:あら、そうなんですか?
永先生:無着先生なんて本当子どものままです。
無着先生:子どもが3人集まっています。
おねえさん:じゃあ、どうしましょう、大人になるには?
無着先生:大人になるにはねえ、なかなか大変です。だから、ここにいる3人は大人になるのをやめようと考えて、ずっと来たんですよ。
永・大橋先生:(笑)
無着先生:大人になるには、色々な手続きが必要です。それは、あなたが大きくなって子どもを産めるようになったとき、世間の人は大人だって思うんですよ。
おねえさん:世間の人はですねえ。
無着先生:これを生物学的な「大人」と言います。だから、生物学的には全ての生物が大人になれます。だけど、人間は子どもを産んでからからも長生きします。例えばセミは自分の子どもを産んだら、かわいそうだけど死んでしまうんですよ。だから、全ての生き物は自分の子孫を残すためにこの世の中に産まれてきます。
女の子:はい
無着先生:鮭はねえ、太平洋を何週もして、それから川を上ってきて、かわいそうだけど卵を産んだら死んでしまうんですよ。だいたいの生き物は、自分の子どもを産んだら死んでしまうんです。だから生物学的には子どもを産んだら死ぬというのが法則としてはあります。ところが人間はそうではなくて、子どもを産んでからどのように生きるかというのが課題で、大人になるということの問題なの。それは、人の心が分かる、人の立場にたって自分を見ることができるようになったら、少し大人になります。これを社会学的に大人といいます。
女の子:しゃかいがくてき?
無着先生:つまり自分がどういうことをすれば、世の中がどうなるのか。友達はどう思うか。そして、その友達の目で自分を見ることができること。他人の目で自分を見ることができること。こういう大人のことを「社会学的大人」といいます。
それから、「私は何をするために産まれてきたのだろうか?」と考えて、それが分かってくるともっと程度の高い大人になります。だから人間が大人になるというのは、生物学的な大人、社会学的な大人、あるいは「存在としての自分はどういうことか?」というのが段々とあります。話は変わりますが、事件なんか起こしている人はほとんど大人になっていない人で、子どものままなんですよ。
おねえさん:なるほど。
巨泉先生:この質問をするところを見ると、大人になりたいのですか?
女の子:なりたくないです
巨泉先生:なるのが怖いからこの質問をしたんですか?
女の子:そうです
巨泉先生:大人になってもいいことがないから、ずっと子どもでいましょう。
おねえさん:大変なんですって。大人になるの。
女の子:はい
おねえさん:でも、頑張ってください
女の子:ありがとうございました。

泉福寺住職の無着成恭先生/放送タレントの永六輔先生/大橋巨泉 先生

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