にんげん・せいかつ
Q. 新聞に載っている写真は、撮った人の名前で「〜氏撮影」と「〜写す」、それと名前が書いていない3種類の写真があるのですが、なぜですか? (中1、男の子)
A. 池上先生:まず、「〜氏撮影」は新聞社に勤めている新聞記者ではなくて、誰か他の専門家の方が撮った写真を紙面に載せる時に「〜氏撮影」とします。それに対して、ただの名前で、「氏」が付いていないで「〜撮影」と書いてあると、その新聞社のカメラマンや記者が撮った場合だということなんですね。
男の子:それと、写すと書いてある場合は、「紛争地域」の記事とかが多いと思うのですが、それはなぜですか?
池上先生:なるほど。
男の子:パレスチナとかイラクとかの記事では写すと書いてあることが多い…。
池上先生:よく見てるね。
長倉先生:気が付かなかったですね。ただ、池上先生がおっしゃったような外部の人と内部の人が写真を撮った差はあると思うんですね。「〜写す」というのはその現場の状況が簡単に写真を撮って発表できるところではなくて、いろんな意味で苦労して、それを電波などにのせて送るといった、「写す」とした方が現場の雰囲気があるという判断が新聞社にあるんじゃないですかね。ぼくが通信社に勤めていたころは、今言ったような「写す」というようなものはほとんど無かったような気がしますね。
やっぱり近年、日本のカメラマンが新聞社から特派されて外国に行くようになって、そこから送ってくる場合に使われるようになったんじゃないでしょうか。
おねえさん:なるほど。「写す」というほうが躍動的、臨場感と言うか…。
長倉先生:そうですね。外国の通信社からくる写真を新聞社が使うことも多いですが、それは「写す」とは書いていないですよね。「写す」というと、私たちが撮って写しているという感じが伝わってくるなとは思いますね。
遠藤先生:やはり、これは名前が出ることで仕事をやり遂げたという達成感があるんでしょうね。
長倉先生:そうですね。それと、写真や記事に対する責任。責任の所在を明らかにすることもあると思います。写真には以前、やらせ写真や捏造(ねつぞう)的なことがあったので、はっきり名前を入れて責任の所在をはっきりさせるという流れが今なっていますね。
遠藤先生:なるほどね。
おねえさん:そして、何も書いていない写真と言うのもありますね。これはどういう写真なんですね。
長倉先生:主に外国の通信社の写真だったり、資料的な写真だったり、これももちろん「クレジット」を入れなくてはいけないのですがね。
池上先生:それと、新聞記者が記事を書きながら、写真を撮るということもあるんですね。プロのカメラマンではなくて、新聞記者もカメラを持っていて、撮るということもあり、プロのカメラマンが撮る時は名前を出す時と、記事を書いた人と写真を撮った人が同じ場合、写真のほうは名前を出さないといったこともあるようですね。
おねえさん:「写す」と「撮影」の言葉のイメージの捉え方が面白いですね。

スタッフから:長倉先生が放送の中でおっしゃった通信社というのは、あまり馴染みのない言葉かもしれません。簡単に言うと、新聞社やテレビ・ラジオなどに記事や写真を提供する会社です。日本には「時事通信社」「共同通信社」の2つの通信社が存在します。新聞記事や写真には、時々、(時事)(共同)(AP)(AFP)といったものが書かれていると思います。APは米国、AFPはフランスの通信社なんですよ。

フリージャーナリストの池上彰先生/フォトジャーナリストの長倉洋海先生/京都大学霊長類研究所の遠藤秀紀 先生

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