にんげん・せいかつ
Q. 「教育基本法」が改正されたと聞きました。どういうことなんですか? それはぼくたちには関係あることなんですか? (小3・男の子)
A. 池上先生:この教育基本法は「基本」という言葉が入っているでしょ。これが大きなニュースになるの。世の中には色んな法律があるよね。みんなが守らなければいけない法律があるんだけど、その一番てっぺんに「憲法」というのがあるのだけど、知っているかな?
男の子:はい。
池上先生:そうか。その憲法というもので、日本の国がこういう国ですと決めているんですね。そこに教育を受ける権利があるということや、子供の保護者には子供に教育を受けさせる義務があると書いてあるのね。それを「義務教育」と言います。そして、その憲法に基づいて、義務教育というのを「9年間」にしましょうと「教育基本法」で決まっていて、その下に色々な法律として「学校教育法」があるの。それは、小学校が6年間、中学校が3年間、授業料は無料と色々細かく決めているんですね。おおもとの憲法と色んな法律の間にあるのが、基本法というものなんですね。だから、教育基本法を変えるということは、憲法を変えるほどのことではないけれど、日本の教育の仕組みを大きく変えるということなので、賛成と反対に分かれ、大きなニュースになったということなんですね。今回、改正された新しい教育基本法には「国を愛する心」という言葉が入っていて、それについても色々な意見があるんだ。みんな、国を愛する心を持っているのに、それをわざわざ法律で決めるのはイヤだという人もいれば、国を愛する気持ちを子供に植え付けなければいけないから、それを法律で決めなければいけないという人もいて、意見が分かれたということなんです。結局、教育基本法は改正されました。そして、それは、君にも関係することなんですよ。これからの教育基本法では、義務教育は9年間となっていました。改正されたものでは、それが無くなっちゃったんです。今の学校教育法では小学校6年間、中学校3年間というのがまだあるから、すぐには変わらないけど、今後は9年間ではなくなるかもしれないんですね。たとえば、成績が優秀であれば、小学校を5年間で卒業して中学校に行っても良くなったり、中学校で成績が良ければ、2年間で高校に入学しても良い、それを「飛び級(とびきゅう)」と言うのだけれど、そういうことがやりやすくなるの。もちろん、すぐにそうなるわけではないけど、たとえば、新しい教育基本法で国を愛する心を育てるということになると、学校の通知表で、「国を愛する気持ち」の態度があるかどうかを通知表で評価されたりすることが起きてくるかもしれません。君はまだ、小学校3年生だけど、もしかしたら、中学校に入学する頃には、そういうところが変わっているかもしれないんですよ。

フリージャーナリストの池上彰 先生

[戻る]