にんげん・せいかつ
Q. 階段のしくみはいつからあったものなんですか? (小6・男の子)
A.

日本だけじゃなく世界中人間の住む「おうち」は、大昔はあまり大きなものを作れなかったんです。なぜ作れなかったかというと、道具があまり良いものが無かっただろう? だから、そばにある木とか石とかを使うしかなかった。それも小さいものとか、細いものとか、軽いもの。だから、昔は「おうち」も小さかったんだよ。その頃の「おうち」は、「たてあな式の住居」というのが教科書に出てくるだろう? あれはもう柱を2本立てて、そこに上に棟木(むなぎ)というのを1本おいてあとは草をバァーとしいただけだよね。だから、人間が立ったら頭がぶつかるか、ぶつからないかの高さなんだよ。そういう「おうち」には階段はいらないよね。
ところが人間はだんだん道具を使うようになってきて、大きな木が切り出せるようになったり、大きな石が切り出せるようになりました。そうしたら今度は、大きな「おうち」が欲しくなるわけだ。どうして大きな「おうち」が欲しくなるかというと大きいほうが楽チンだからね。頭ぶつけなくていいしさ、それに「おうち」の中にいろいろな部屋が作れるだろう? だから2階建てが作りたくなるわけだ。そこで2階建てを作ったのはいいけど、どうやって上がったり下りたりするかを考えた。そして、作ったのが「階段」だったわけだ。たとえば、九州の吉野ヶ里古墳(よしのがりこふん)だとか、あるいは青森の三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき)とかには大きな建物があったことは分かっているわけですよね。と、そういう大きな建物はすでに2階建て、3階建てになってたんだ。
ではじっさい、「階段」の形ができたのは、どのくらい古いかというと日本では「弥生時代(やよいじだい)」ぐらい。その階段は、一番最初は大きな木を1本切ってきて、丸太にするんだ。その丸太の半分にギザギザをつけるわけだ。「割りばし」とか「えんぴつ」とかに傷つけるとへこみができるじゃない。その丸太をななめにするとそこに足がかかるじゃない。それを「丸棒階段(まるぼうかいだん)」というんだ。階段は、丸太にただきざみをつけた階段から発達していったんだ。しかし、この階段は小学校高学年とか中学生とかみがるな若い人だったらスルスルスルッと登れるけれども、年をとった人とかはなかなか登れないじゃない。足がふるえたりしたらすべって落っこちて大ケガしてしまうでしょう? そこで、なんとかしてあんぜんな階段はないかなあと思ったとき、丸棒階段を2本ならべて、その足をかける所に板をしいてみたのさ。そうしてと両方の丸棒の間に板をわたしてこの板の事を「ふみ板」と言ったんだ。まさに「ふむ、板」なんだけれど、そこに板をのせると丸太よりかは登るのに少し楽チンであんぜんだろ? こうして僕らのよく見る階段ができたんだ。
だけれども、1本の丸太はどうしたって長さが決まっているだろう? 1000メートルの木はないしね。しかも木の使えるところは決まっているよね。木が10メートルだからって、10メートル全部は使えないでしょう? 先のほうは細くて枝だから階段にしてもまがっちゃうだろう? そこでなんとかして階段をつぎたす方法を考えたわけだ。
つぎたす時どうするかというと、まっすぐつぎたすとずーっと長い階段になって、けっこう急なななめになってしまうだろう? そうするとこわいから、とちゅうで一度平らな所を作って、そこからまたつぎたそうとしたんだ。 それが、小学校やもしかしたら自分の「おうち」にもあるかもしれない「おどり場」というものなんだ。ふつうの小さな「おうち」なら、そこで方向を変えてべつの方向に上がっていくようになっているでしょう。そういうふうにして階段をつぎたすことによって階段でどんどん高い所に上がれるようになったんです。それがだいたい2000年ぐらい前、弥生時代にはできてました。
一方、海外では「ローマ時代」、今も残る“キャピトリーノ”といういろいろな宮殿がありました。そこにはりっぱな石の階段があるんだ。建物を建てるには日本では、周りに木がいっぱいあったから木を使っていましたが、ローマなどイタリアなどには木があまりなく、そのかわり大理石(だいりせき)がいっぱいあるわけだ。ですからローマ時代には、建物は石で作られ、階段も石で作られたんです。石で建物を作るには、土台をしっかりしないと上の方が重くつぶれてしまう。だから、石の階段の中身は石で埋まっている。しかし、日本の階段は木でできていて、中身がからっぽだよね。だからそこに物をしまおうと考えた人がいた。そこで、日本では階段ダンスが作られたんです。階段のふみ板の下が全部引き出しになっているんだよ。
このような階段の歴史。日本では2000年ぐらい前から、ヨーロッパでは紀元前300年から400年ぐらい前までには階段がありました。


女子美術大学:岡田紘史 先生

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