にんげん・せいかつ
Q. 去年学校にサウジアラビアの人がきたんですけど、その時「命を大切にするんだよ」とか「おとうさんとおかあさんをたいせつにしょうね」とかいっていたんだけど、でもいま言われているみたいに(今回のテロを)イスラムの人がやったとしたら、どうしてとつぜんアメリカのテロを考えたりとかするんですか? (小6・おとこ)
A.

永先生:
ここで忘れてはいけないのは、イスラムの人が悪いわけではないんです。悪いのは、テロリストです。だって、今回のアメリカの事件をおこしたのはテロリストだもんね。

では、どうして今回のような事件がおこったかというと、いろいろな宗教がもつ「いのち」に対する考えかたがちがうからなのです。世界には、ユダヤ教やキリスト教、ヒンドゥー教やイスラム教、仏教などいろいろな宗教があることは知っていますよね。それぞれの宗教は、人間の体が死んでしまったらそれでいのちもおしまいという考えかたもあるし、いのちはえいえんにつづいていくものだという考えもあります。なかには、あの世とこの世はちゃんとつながっているんだよというふうにかんがえる人もいるのです。

ちなみにイスラム教は「あの世とこの世がつながっている」という考えかたをする宗教です。私は仏教なのですが、仏教のばあいも、この世で死んでしまったら極楽浄土(ごくらくじょうど)というあの世に行って、そこでまた生きましょうねというものなんです。

こうしてみると「いのち」がたいせつなものだというのはみんなおなじなのです。しかし、いのちに対する考え方がちがってしまうです。それはとても生活しやすいところにすんでいる人と、とてもきびしい自然のところにすんでいる人とでは、考え方がちがってくるからなんです。また今回のことはいのちに対する考え方の違いのほかに政治(せいじ)のもんだいもからんでくるんですね。では、政治がからんできたので、青木先生にバトンタッチしましょう。

青木先生:
あなたがサウジアラビアの人と会えたのはとてもいい経験だと思います。今回のテロのはんにんだといわれているオサマ・ビンラディンという人も、じつはサウジアラビアの人だといわれています。それで今回イスラムの宗教の人がテロをやったというふうにいわれていますが、イスラム教の人は世界に12億人いると言われていて、その人々の中で、イスラム教をどういうふうに考えていくか、どのように守っていくかというところでそれぞれ考え方がちがうのです。

その中には、今のイスラム教が「よごされいる」「まちがっている」とすごくおこっている人たちもいます。こういう人たちのことを「原理主義(げんりしゅぎ)」という名前でよんでいます。ただ、原理主義の人にもさまざまな考え方があって、毎日心やすらかにイスラムの教えにしたがっていこうという人もいるし、イスラム教がみんなにこわされているとおこっている人たちもいます。その怒りをもっている人たちを、イスラム原理主義の「過激派(かげきは)」というふうな呼び方をして、こんどのテロをおこしたといわれています。

だからひとつの宗教のなかでもいろいろな考え方があって、ときにはこういうひじょうにひどい行動をとる人もいるということです。ほんとうに一部の人たちなんですよ。ビンラディンという、今回のテロの犯人といわれている人の仲間は、5000人ぐらいだといわれています。12億人の中の5000人だから、ほんとうにそのごく一部というのがわかってもらえるよね。このことをわすれないでね。


放送タレント:永 六輔 先生、日本大学国際関係学部:青木 一能 先生

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