過去の議事録

2006年6月26日(月)開催 第43回TBSラジオ&コミュニケーションズ番組審議会より
「今晩は 吉永小百合です」

出席者(敬称略)

委員長吉越浩一郎 
副委員長山野 勝 
委員宮台真司 萩原健太 野地秩嘉 田中里沙 多田羅万由美

局側出席者

 清水 社長

 余田 編成制作局長

 入江 経営企画室担当局長

 千葉 番組審議会事務局長

 安村 番組審議会担当部長

 鈴木 プロデューサー

番組の概要について

吉永小百合さんはこの番組の前に「吉永小百合 街ものがたり」という番組を1977年から2004年の3月までやっていました。映画「北の零年」の撮影のためにその番組はいったん終了し、1年半を経て、装いも新たに「今晩は 吉永小百合です」というタイトルで昨年の10月からスタートしました。 吉永さんは、60歳を超えても若々しく、精力的に活動している女優の代表でもあり、その吉永さんの映画以外の1つの表現の場がこのラジオ番組です。以前の「街ものがたり」は国内外の1つの街にスポットを当て、歴史とか名所とかゆかりの人物とかをフューチャーしていくという内容で、比較的筋書きもあり、そこに本人が感想を話していくというスタイルをとっていました。 一方、現在の「今晩は 吉永小百合です」は本人の希望もありフリートークで吉永さん自身のパーソナルな部分をかなりフューチャーしています。それゆえ番組のテーマも毎回違いますし、季節の話題や旅の話、ワールドカップなど巷の話題など本当に幅広く取り上げています。  また、不定期的にゲストの方をお招きしてのトークもあります。ゲストは今後もなるべく多くの方をお呼びするつもりです。ゲストの方とのトークを通しても吉永さんのパーソナルな部分が発見できる。そんな番組です。

主な委員の発言とプロデューサーの発言

★ 日曜日のこの時間帯というのは、主婦にとっては翌週の準備などあり、かなりバタバタしていて、気がついたら終わっていたりして、なかなか聴けるチャンスがないように思います。

★ 今回は旅に関してだけだったので、またほかのテーマのものも聞いてみたいと思いました。

★ この番組はターゲットがどれぐらいの方なのかなとか、そういうことを感じました。

☆ (鈴木プロデューサー) 実際に聴取率が高いのは、やはり50代が1つのボリュームゾーンになってます。以前はやはりサユリストといいますか、吉永さんと同世代、今の60代がその次に来ていたんですけれど、最近はそれよりかなり下の年代の方、例えば20代の女性とかの聴取率が結構いいときがあります。ある意味では世代を超えて1つの日本の象徴のような女性というところが共感を得るのかもしれないですね。

★ ふだん割とベールに包まれている印象が強かった吉永さんですが、ケタケタと笑いながら、ご自分がムカデに刺されてしまった話とか、若い頃のヤンチャナ話とかすごいチャーミングな感じが伝わってきて、よかったと思います。

★ 今回聞いていて、とても示唆に富むというか、非常に勉強になったなと思ったところが2つあります。1つは、聞いていると、吉永さんの話すスピードが物すごくゆっくりで、今テレビを見ていると、やたらと早く喋っていて、テロップが出るという形になっていますが、ラジオ番組でゆっくり喋ることはひとつの個性で、しかもゆっくり喋ることになれている人がやっているからじっくり聞けるんだなと思いました。

★ もう1つは、吉永さんが番組の中で、例えばミカン畑の中で作詞したとか、昔、川奈のゴルフ場ではキャディーさんがバッグを担いでいたというようなことを喋っているところは、情報を送る際に、情景を喋っているという所がものすごく重要だなと思いました。僕はサユリスト世代でもなく、吉永小百合という人の映画を見に行ったこともないですけど、何か立派な人だなと思って素直に聞いていました。

★ 日曜日の夜10時というのは、ラジオにおいてはどういった時間なのでしょうか?

☆ (鈴木P)日曜の夜という部分は、やはりウィークデーや土曜日と多少違いまして、大人が次の週に備える、1つの一番パーソナルタイムではないかなと思っております。

★ 吉永さんという大女優だからこういう番組が成立するのでしょうか?そうじゃない人がこういう番組をやるとどうなのかなと思いました。

☆ (鈴木P)番組のつくりにもよりますけれども、吉永さんはラジオに関しての情熱がとても深いんです。テレビに余り出ない。1回聞いただけで人にきちんと伝わるというようなことをご自身のモットーにされているということもありますので、吉永さんの個性によってこの番組が、成り立つ部分は大きいじゃないかなと思います。

★ 昔はこのテンポの番組、あるいはこういうアプローチを見せる番組というのがもう少しあったような気もするんですけれども、むしろそういうものが全くなくなってしまった今となっては、こういう番組の存在はとても重要で、ほっとしました。

★ 「今晩は 吉永小百合です」と自分の名前をタイトルに、こういう形でつけられる人は、文化的に言って、日本では長嶋さんか吉永小百合さんぐらいしかいないと思います。この堂々とした感じもすばらしいです。

★ 確かに以前の「街ものがたり」の方がつくり込みっぽかったですね。だから、そのイメージかなと思ったら、今回ももちろん、明らかに読んでいらっしゃるところというのもあるわけですけれども、そこからフリートークに流れる流れがとてもスムーズでいいなと思いました。

★ 特にフリートークであろうと思われる箇所での生き生きとしたあの喋りというのがほっとさせてくれます。何を喋っていても、すごい楽しそうだなと思いながら、聞いているだけで何となく幸せになれる番組だなと思いました。

★ 30分という長さも含めて、いろんな意味でほっとできる瞬間を提供する番組だと思います。

★ この番組は、あえて誤解を恐れずに言えば、実はかなり政治的なニュアンスを含んだ番組だなと思いました。というのは、そのこと気がついたのは「湯ヶ島も修善寺も下田も伊豆市になっちゃった」という発言をして、「いや、なっちゃったなんて言っちゃいけないのかもしれませんけどね」というふうに言い直すところがあるんですね。これは、実は非常に政治的な響きを帯びていて、彼女がこういった発言をすると、ある種の強い印象があるなと思いました。

★ 吉永さんが話すエピソードはすべて昔と今という対比になっていて、まず吉永さんが大変ゆっくり喋られるということも、先ほどあったように、大変重要なポイントだと思います。また、昔と今の違いを、聞いている人に非常にはっきり印象づけるつくりになっていると思います。昔はゆっくりしていたし、情緒的で文学があり得たし、文学者もいたし、教養人もいたし、川端康成の名前とか出てきましたし、田中絹代さんの名前も出ていましたけれども、旅があり得た。今で言う旅行ではなくて、旅があり得て、そこではおいしい料理、海の幸、山の幸もありで、どっちかというと今の時代がどういう時代であるのかというのを際立たせるようなつくりになっていて、これは非常に戦略的ですばらしいと思いました。

★ 今の時代に何が欠けてしまったのか、何が変わってしまったのかということをあえて直接に言及しなくても、十分に時代批評というニュアンスを込めること、あるいはそれを人に伝えることができる番組だなという印象でした。

★ やはり吉永さんだからお話に強い説得力を持つということは間違いないと思いました。その吉永さんだからという部分には、今までの映画の実績、女優の実績、そして喋るスピードや漂わせる雰囲気、そういう彼女のキャラクターが非常に大きな信頼になって、批評的な印象を与えることに成功していると思いました。

★ 吉永小百合さんというと、永遠のお姫様で、優等生でいらっしゃるというイメージで、声の部分については、重々しい感じなのかなという先入観を持って聞き始めましたが、大変ゆったり、ゆっくり語りかけるような感じで、あっという間の30分でした。

★ いろんな話が中に入っていたなという印象を持ちました、この盛りだくさんの構成は、どんなふうに台本が書かれているのだろうかとまずは興味を持ちました。

☆ (鈴木P)今回の伊豆の話は、もちろん『伊豆の踊り子』からの引用の部分でありますとか、最後の朗読の部分でありますとか、そういうことは当然台本がありますが、7割以上が本人のパーソナルトークです。

★ 女性の視点から言わせていただくと、女優の吉永小百合さんの視点、女優さんしか体験できない川端康成さんのエピソードとか、普通の女性の視点、ムカデにかまれた話とかゴルフのお話とか、非常にかわいらしい、一般的な女性の一面を覗かせるお話、そんな両方のお話が楽しめるので、女性が聞いても、あこがれというか生き方として、外面も内面も美しく生きている人の代表みたいで共感を得るだろうなと思いました。

★ 女性として、物事をどうとらえるかとか、生き方とかがよく描かれているので、非常に参考になり、聞いていていろんな知見が得られる番組ではないかなと思いました。

★ 自分のことを淡々と話す部分と、あとはリスナーの方にちょっと考える機会を与えるみたいなところがあり、例えば川端康成さんのエピソードを交え、そこに少し間があって、リスナーの方が『伊豆の踊り子』で川端康成さんへの思いをはせる時間を与えたりして、人に物を伝えるのが非常に上手だなと思いました。

★ 普通の人が話すと少し品のないと思う話も、すごく上手に品よくお話しされるので、若い女性、私は若くないですけれども、やっぱり学ばなきゃいけないなと感心しました。

★ この番組の魅力は、吉永小百合さんでしか体験できない、女優の世界、それも本物の大女優の世界というもの、日常とは大分違う世界というのが、これはのぞき見したいけれども、なかなか見聞きできない世界ですが、こういう部分をさらりと話されるところだと思います。そして、それは聴いていてもすごく楽しいなと思いました。

★ 今回のテーマは旅の話でしたが、別のテーマ、スポーツだとか映画のときというのも、また聞いてみて、雰囲気をちょっと感じてみたいなと思いました。

★ 私はサユリストですから品行方正で清く正しい吉永さんが好きで、何を話していただいても結構なんですが、ちょっと心配したのは、そうじゃない人達、新しいリスナーに対しては毒というか特徴がなさ過ぎるのかなと心配になりました。

★ 伊豆市や伊豆の国市ができて、昔の素敵な地名がなくなった話。僕も行政のやり方に実は物すごく憤慨しているんです。それを彼女があそこで言ってくれたことに関しては、大変うれしかったですね。同じ考えを持っている人がたくさんいるんだなと思いました。

★ 吉永さんの語り口が非常に品よく、しかも60代の女性の代表選手みたいな、発言というのが、今でもこの番組の中で生きているということは、日本もまだまだ捨てたものじゃないなという感じを受けました。

★ 提供スポンサー(JR東日本)の宣伝と今回のテーマの旅の話が非常にきれいによくマッチしていたと思います。

★ かかっている曲がやたらに古いものばかりで、吉永さんも60歳なので、若い人が聞くとイメージがかぶってしまうのではと心配になりました。

☆ (鈴木P)音楽に関してなんですが、今回はテーマの関係でたまたま「伊豆の踊り子」と「みかんの花咲く丘」になってしまったんです。例えば沖縄の特集のときなどは、昔の沖縄民謡の三線をかけ、若い人に人気のORANGE RANGEをかけたりしました。吉永さん自身、大変キャパシティーが広い方だと思います。

★ 吉永さんは特に若い人にすり寄るわけでもなく、自然体で古い曲も新しい曲も似合うきれいな人だなと思います。特に毒も必要もないと思いますし、その方が美しいし、そのテイストを保っていれるのが、この番組の特徴で、今の世の中には強くアピールできると僕は思います。

(TBSラジオ番組審議会事務局)