新・調査情報 passingtime 1996/9-10 no.001
ドラマ
技術論をマスターして
初めて感性が問われる
貴島誠一郎 プロデューサー
ヤクルト・野村監督のID野球が花咲いている。羽生善治も、パソコンで棋譜を研究したと聞く。戦略も、感性だけに頼れない。
しかし、科学的トレーニングやコンピューター的戦略をマスターした上で、最終的に問題となるのは、人間の気力や意志といった精神的な分野である。
集団で作るテレビドラマに
必要な「共通語」
テレビドラマが芸術の分野に属すか否かは議論のあるところだろうが、僕は個人か集団かで分けることにしている。シナリオ、役者の演技、演出、カメラワークや美術デザインなどの個人的な作業はアートの分野に入る。しかし、その集大成であるテレビドラマという映像番組単位になると、かなり商業的なものであり、企業の論理に近くなる。テレビは優れて大衆的なアプローチであるからだ。
才能・分野の異なる百人以上のスタッフが集団となって制作するテレビドラマにおいて、共通語を持たない“感性”によるところの個人的な主張は通りにくい。プロデューサーは、芸術的才能集団の調整能力とリーダーシップが問われ、次に企画性が問われる。
テレビドラマの制作に当たって、科学的とは言わないまでも、理論的・技術的なアプローチが考えられてよいはずだ。ドラマ界でよく使われる“感性”という言葉は、単に若いとか新しいということを指しているケースが多い。しかし、技術論をマスターした上で初めて“感性”が問われるのである。
近年のハリウッド映画は、ワールド・マーケットを意識した物が多い。俳優の津川雅彦さんが、ハリウッド映画制作の基礎ソフト「ドラマティカ」の日本語版制作に尽力されているのを聞き、面白いと思った。「ドラマティカ」は(一)ストーリー、(二)キャラクター、(三)スケジュール、(四)バジェットの四つの基本ソフトから構成されている。
ドラマを成功させる
七つのパターン
高額な制作費のリスクヘッジをするためには当然のことだろう。しかし最終的な判断は、プロデューサーという名の“人間”であり、やはり“感性”が必要だ。もちろん、技術をマスターした人が条件である。
映画評論家の白井佳夫さんに、ハリウッド映画の成功パターンは七つあると聞いたことがある。以下、僕なりに考えたパターンを挙げてみたい。
1. 三角関係を軸とするラブストーリー
「男女七人秋物語」「東京ラブストーリー(フジ)」「愛していると言ってくれ」
2. 時代を反映した世代別群像ドラマ
「俺たちの旅(日本テレビ)」「金曜日の妻たちへ」「ふぞろいの林檎たち」「抱きしめた
い!(フジ)」「未成年」
3. 家族の絆を中心としたホームドラマ
「スウィート・ホーム」「渡る世間は鬼ばかり」
4. 理想的な人間像を提案するドラマ
「3年B組金八先生」「振り返れば奴がいる(フジ)」「課長サンの厄年」
5. 事件性の高い謎解き型サスペンス
「ずっとあなたが好きだった」「古畑任三郎(フジ)」「沙粧妙子 最後の事件(フジ)」
6. グランドホテル形式の職業ドラマ
「太陽にほえろ!(日本テレビ)」「ホテル」「外科医・有森冴子(日本テレビ)」
7. サクセスストーリー型ドラマ
「101回目のプロポーズ(フジ)」「悪女(わる)(日本テレビ)」「妹よ(フジ)」「味
いちもんめ(テレビ朝日)」「お金がない!(フジ)」「秀吉(NHK)」