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<小説版>ああっ女神さまっ 初終 ―First End― 外伝
夢みる翼
EPISODE-3「戦う瞳」

 「魔界研修が中止〜?!」
 穏やかな天界にフレイアの声がこだまする。
 集合時間よりもかなり前にミーティングルームに集まり“予習”を恒例としていた仲良し三人組の準一級女神たちだったが、今日は予習どころではない。
 「そうなの。評議会もかなり迷っていたらしいのだけれど…昨夜遅くに正式に決定が下されたらしいわ」
 「でも…どうして?…だって魔界研修は今日、これからよ」
 「なんでも、魔界の様子がおかしいとかで…」
 女神ヴォールは声をひそめる。
 「あんなにもアグレッシブだった地上へのアクセスが全くないらしいのよ…」
 確かに…魔界の異変は少し前から噂にはなっていた。パッドで近況確認や状況サーチくらいはできるものの、ユグドラシル・システムをまだ正式に扱えない彼女たちにとって詳しい事はわからない。そんな時期に重なった魔界研修…怖いもの見たさで好奇心が湧くのは当然のことだった。
 「残念…異変が起きている魔界を是非とも見たかったのに…」
 フレイアは大きなため息をつく。
 そんなふたりの話を黙って聞いていた女神スノトラだったが、おもむろに武術の書を目の前に置いた。
 「おかげで魔界研修よりも大変かもよ」
 「…何、これ?」
 「戦闘部への実地訓練に切り替わったの。朝早くに連絡が来たでしょ…パッド見てないの?」
 「え〜〜っ」
 肌身離さず持ち歩いているパッドのはずなのに、今朝に限ってまだ目を通していない。慌てて見てみると、確かに緊急連絡と大きく表示されていた。


 「無駄に力を入れると疲れるぞ」
 淡い水色の髪を揺らし、一級神特務限定リンドは“戦斧構えの型”を披露する。流れる動きは、まるで“舞い”の様に美しい。
 「…戦いは我ら戦闘部の努めだが、諸君たちも最低限の戦い方はマスターせねばならない。時として法術では解決し得ない事態に遭遇するかもしれないからな」
 訓練用の戦斧が女神たちに配られる。
 「本来ならば1番戦斧を渡すところだが…諸君たちは一級に限りなく近い準一級神だ。力があることを考慮に入れて、あえて3番を手にしてもらった」
 槍の刃先の脇に少し大きめな美しい曲線を描く斧が付いている武器に圧倒されている女神たち。
 「では…はじめっ」
 リンドの掛け声に皆一斉に型を練習し始めた。ぎこちなさが漂う中…フレイアだけは喜々として型を会得していく。
 “一度は手にしてみたかった…ワルキューレの戦斧…すてきだわ”
 天使レイディアントセティも白い髪をなびかせ、主のフォローに入っている。その見事な連携ぶりにリンドは目をとめた。いつもはエメラルドグリーンの彼女の瞳が、赤みを帯びた色へと変化し始めている。
 “ワルキューレの資質があるのか…女神フレイア”
 頭上の構えから気合を込め一気に振り下ろしていくフレイアの切っ先を、リンドの戦斧がガシッと受け止めた。キンッと鋭い音が辺りにが響く。
 「なかなかいい筋だ」
 「あ…ありがとう…ございます」
 あがる息の中、切れ切れに言葉を発する。微笑むその瞳はもうエメラルドグリーンに戻っていた。
 「法術式の暗記より…むいているみたいです」
 「だろうな…フレイア。一級神になったあかつきには、戦闘部へも顔を出されるがよい。新たな可能性を見いだせるかもしれないからな」
 「は…あ…」
 その言葉の真意がよくわからずフレイアは、ただなんとなくうなずくだけだったのだが、行きかけたリンドの背におもむろに声を掛けた。
 「あの…女神リンド…どうして戦闘部へ入られたのですか?」
 「……」
 「へ…変な質問をして失礼だとは思いますが…あの…」
 風が黄金色の髪を揺らし、戸惑う顔に影を落とす。瞬きもせずに見つめていたリンドだったが、蒼い瞳をわずかに伏せた。
 「…私が戦闘属性に秀でていたからだ」
 「え…」
 「例えば…女神ベルダンディーは時の神として“現在”を担い、時の流れを風と共に歩む力に秀でている。貴君の師である女神エイルは治癒に長けている。各々が持つ資質を伸ばし自分にしかできない事を成してゆく…それが一級神としての義務と責務だと私は思っている」
 「属性…義務と…責務…」
 「私は反省はしても後悔はしない。…得られた結果に突き進み、突き当たったらまた最善の策を講じる」
 己の心の奥底によどむ不安を言い当てられた様で、フレイアは思わず顔をあげた。
 試験に対する心配事だけではない。一級神になれたらなれたで、また様々な問題に直面することになるだろう。女神とて未来に対する不安や迷いはある。そんな誰にも言えない悩みに光が当たった様な気がした。
 「一級神二種非限定となり、他のものたちに幸せを与えたいと強く願うその想いもまた、資質のひとつなのだと思う。突き進め、自分の思いのままに…な」
 「…はい!」
 暖かな陽の光りに黄金色の髪がキラキラと煌めく。
 迷いのない緑の瞳は、まっすぐに未来を見つめていた。


やっぱり身体を動かすっていい!!
心身共にすっきりするもの。
…それに。
それに女神リンドの言葉がとても心に響いた。
属性…なんて今まで深く考えたこともなかった。
私の属性は光だけど…自分の中では、それ以上でもそれ以下でもなかったし。
でも…物事に偶然はないのね…必ず意味があるんだわ。
責務や義務は…まだ明確に見えてこないけど…
でも女神エイルの教えを無駄にしない様…私は精一杯の力を持って、試験に臨むだけ。
でも…どうして女神リンドは、戦闘部に顔を出せ、なぁんて言ったのかしら?


 《戦う光翼…赤き瞳のワルキューレ》
 と謳われ、一級神二種非限定でありながらワルキューレでもある女神フレイアの話は…まだまだ先のことになる。


to be continued...


<小説版 ああっ女神さまっ>
初終ーFirst Endー
2006年7月21日(金)-発売中-
著・冬馬由美
原作・藤島康介
イラストレーション・松原秀典

©冬馬由美・藤島康介・<小説版>ああっ女神さまっ 初終ーFirst Endー・講談社/2006



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