選ばれし素敵な訳たち
優秀作品
訳者の皆さんの作品
「第25章」講評
第25章「井戸に出会う」の章です.応募総数は36件でした.
『星の王子さま』は,物語の最後に近づくにつれて,次第に神秘的かつ哲学的になってきますね.それまでは可愛い少年だった王子さまが,作者の代弁者となって深遠な思想を語ります.子ども向けのやさしい本だと思って読んできた人は,このあたりに来ると,もう投げ出したくなってしまうかもしれませんね.選考委員会のなかでも,「この章はとても奥深いくて,どのような解釈をすべきかわかりかねる表現が多かったです」との感想が述べられました.
なかでも,もっともわかりにくいのが,Pourquoi fallait-il que j’eusse de la peine… ですね.応募訳になかにも,いろいろな解釈が見られました.一つには,接続法半過去のj'eusse を接続法大過去のようにとらえて,これを完了を示すものとしている訳がかなりありました.砂漠のなかを苦労して歩いてきて井戸を見つけたあとですから,そのように解釈したくなる心情はわかりますが...二つ目には,fallait-il queを省略してしまって,単に,Pourquoi ai-je de la peine... のように訳している例もいくつか見られました.これはfallait-il que が訳しづらいので,そうなったのかもしれません.三つ目には,前文との間に Pourtant あるいは néanmoins のような逆説の接続詞を補って訳している場合です.ただし,前文とのあいだになぜそのようなニュアンスを読みとることができるのかという問題が生じます.というわけで,以上,三つの例とも,ちょっと無理があると思われます.
さて,優秀作品の選択にあたっては,上記の点もさることながら,むしろ全体のできばえを考慮しました.章の全体を通して,ムラなく統一的な訳文が作られているものとして,今回は次の11篇を選びました.
「プティムートンさん」「La Petite Princessse さん」「oomot さん」「葦野美保子さん」「こみちさん」「あぱさん」「Nini さん」「Malena さん」「ケセラJさん」「みちよさん」「うさクマさん」
さらに,パイロット賞(優秀な語り手としての訳)としては,シンプルでわかりやすい訳文の「プティムートンさん」を選びました.また,原文にはない語を補って個性的な解釈を示された「Neige さん」にはバラの花賞(華麗で美しい訳)を差し上げましょう.
パイロット賞 「プティムートンさん」
バラの花賞「Neige さん」
