選ばれし素敵な訳たち

「第18章」講評

第18章「花との短い会話」です.短くてやさしい文章でしたので,投稿数は51と,「はじめに」の69件以来,もっとも多い数になりました.
それぞれの訳の個性の違いがはっきりとは出なかった章ですが,その中ではLe vent les promène. の訳文が多彩でした.そのまま風を主語にすると,「ひきづりまわす」「運ぶ」「運んでいく」「連れまわす」「散歩」「連れ去って」「連れ歩く」「案内役になって」などとなりますね.また,人間たちのほうを主語にすると,「ふかれて」「さらわれて」「飛ばされて」「吹かれるままに」「風まかせ」「風の向くまま」となります.
また,この花を若い女性のイメージで訳した人が多かったですが,なかにはちょっとおばさんっぽいのがあったり(「どこにいるかなんて,誰に聞いたってわかりやしませんよ」「どこに行きゃ見つかるもんだか,ちっとも分かりゃしないんだよ」),また男っぽいものもありました(「今,どこにいるのか,さっぱり分からん」).
応募数が多くて,しかも優劣つけがたいだけに,選考にはたいへん苦労しました.この章の簡素な美しさがどこまで日本語で表現できているか,それを判断基準の一つにしました.フランス各地に見られるシトー派修道会の建物のように,いっさいの装飾を廃して,ただ積み上げた石の単純な色が帯びるごくわずかな相違,それが無限の細やかなニュアンスを生み出していくような,そんな章ですね.
まず,一次予選で半分の25件まで絞り込みましたが,そこからあとがたいへんでした.いくらなんでも25件すべてを優秀作品とすることはできません.そこからさらに篩にかけて,(いろいろ迷ったあげくですが)最終的に13件としました.普段よりちょっと多めの優秀作品です

 「T. Tatsuki さん」「ももさん」「ごまちゃんさん」「vendredi 13さん」「にっこりさん」「あぱさん」「hanaonaraさん」「TKさん」「Nini さん」「Nさん」「pasha さん」「はつよさん」「satochar さん」

 パイロット賞(優れた語り手としての訳)も,今回は,すっきりと簡素に美しく仕上がっているものをという観点から,これまでもけれん味のない正攻法の訳文を創りつづけてこられた「vendredi 13さん」を選びました.そして,個性的で,ほのぼのしたユーモアもただよっている「モヨ彦さん」の作品には,久しぶりの呑んべえ賞(個性的なユーモアあふれる訳)を差し上げましょう.

パイロット賞 「vendredi 13 さん」
呑んべえ賞  「モヨ彦さん」

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