名だたる古典バレエを自身のプロダクションとして生まれ変わらせてきた熊川哲也が、原作も音楽も存在しない全幕作品に挑んだのは2017年のこと。絶世の美女の代名詞でありながら、いまだ多くの謎に包まれているクレオパトラ。熊川は壮大な史実を紐解きオリジナルのストーリーを構築、全2幕にわたるグランド・バレエに仕立てあげた。
作品の成功を大きく左右する音楽に熊川が選んだのは、知る人ぞ知るデンマークの大作曲家カール・ニールセン。舞台美術デザインには、メトロポリタン歌劇場やミラノ・スカラ座など世界の一流オペラ劇場の舞台を手がけるダニエル・オストリングを起用。ゴールドとエメラルドブルーを基調とした斬新な造形美と空間使いは、現代的感性が光る前田文子の衣裳と相まって観客をいにしえの世界にいざなう。そして、クラシック・バレエの既成概念を大胆な創意で押し広げた振付。すべてが完璧なる融合を果たした、振付家・熊川哲也の最高傑作がこの「クレオパトラ」なのだ。
今回、圧倒的な技術と存在感、クラシックの枠を超えた表現を必要とされるタイトルロールを演じるのは日髙世菜、飯島望未、浅川紫織の3人。熊川に「完璧なバレリーナ」と言わしめた日髙世菜。可憐な容姿に反して野性的な動きを得意とし、今年3月に「プリンシパル」に昇格した飯島望未。そして、初演時のキャストである浅川紫織は怪我からの完全復活を遂げる。クレオパトラ第二世代となる日髙と飯島、初演時の名演を蘇らせる浅川の競演が作品に新たな息吹を吹き込む。
さらに今回、ジュリアス・シーザー役に熊川哲也の出演が決定した。ギリシャ・ローマの歴史を決定的に変えた政治家であり軍人という役所のシーザーは、クレオパトラの激動の人生を司るキーパーソン。圧巻の存在感を必要とされる役だけに、期待は尽きない。
最高の布陣でお贈りする熊川哲也の最高傑作、4年ぶりの再演をぜひお見逃しなく!