にんげん・せいかつ
Q. 人間は何ボルトで感電してしまうのですか? (小5・おんな)
A.

人間の体というのは、5年生だと80パーセントぐらい、年をとった人でちょっと乾燥した人でも70パーセント、赤ちゃんだと90パーセント、水で出来ています。その水はただの水ではなくて「電解質(でんかいしつ)」といって、食塩やマグネシウムなど、いわゆる電気がとおりやすいもので出来ているの。だから人間の体は、どんなに少しの電流でも電気を通すんですよ。

ただ、どのような支障があるかというと、その電気の量が1ボルトや2ボルトぐらいなら問題はありません。ジャンパーを脱ぐとき、静電気でバチバチってなっても死んじゃったりしないよね。でもこれが100ボルト200ボルトとなると大変なことです。触ったときに反射神経でパッと離してしまえばそんなに問題はないんだけど、そのままずっとさわっていたりすると、やけどをして感電死する場合があるの。

じゃあ今度は雷の場合ね。雷は、人間の頭の高さあたりが400ボルトぐらい。地上に着くと0ボルトです。ひざ下あたりで20ボルトぐらいかな。電気が体を通り過ぎるとき、右肩から入って右足に抜けるという状態なら、もちろんやけどはするけど、あとで再生できるし、命にかかわるようなことはありません。でも右肩から入って左腰へ抜けるというような、心臓を通過するという抜け方だと、これは感電死という状態になってしまうこともあります。

私たちはよく山で雷に打たれるんですよ。それは、私たちが行っている山は岩山で鉄分も含んでいて雷を引っ張りやすいということもいえるんだけどね。なかには左腕のひじの上から雷が通って、手の甲から抜けたりする人もいるんです。その跡を見ると、雷が入ってきたところが十字のマークになっていて、抜けたところはヘビがニョロニョロしたように血管が浮き出ているの。これを「メデューサの頭」とよぶんですけど、そうなっても大量の電気が心臓を通ったり、肺に穴があいたりしなければ、さほど問題はないんです。

とにかく、電流の量も関係があるけど、それよりも電気がどのように体のなかを通っていくかによって大変なことになる場合もある、ということを覚えておいてください。

基本的に人間の体というのは、常に電気を帯びるようになっているわけだからあまり心配はしなくていいんだけど、でも当然ながら危険なものには触ったり近づいたりしないことですよ。


登山家・医学博士・今井 通子 先生

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