どんな絵を描くのかなぁ？　君の描く絵を見てみたいなあ。でも、こういうしつもんをしてくれるということは、自分の絵をへただとおもっているんだよね。わたしの絵を見たことありますか？　一度見てみてください、へたですから・・・。ちなみに、きみが「うわぁ、すげえ」と思う絵はどんな絵なんですか？　友達に「この人の絵ってすげぇ」という人いるかな？　じつはね、へたなほうが絵はいいんです。
うまい絵というのは、きちんと描いている絵だよね。でも、へたな絵というのは君の個性がよくでています。というのも、あなたのへたな絵は、他の人がまねできません。
絵はうまいかへたかじゃなくて、その人しかかけない絵がいちばんいいんです。だからあなたが描いている絵はあなたしかかけない絵を描いているわけだから、いいんです。たとえばお魚を描くとうまい人はほんとうに見たまんまのようすをきちんと描くよね。でもきっと、あなたがイワシの絵を描いた時、パッと見てへただなぁと思う絵なら、イワシに見えないような絵を描いていると思うんだよね。あなたが描いたイワシはあなたとイワシの間に生まれた新しい命なんです。この地球上に生まれた新しい生命なんです。それが、絵なんです。だからうまいへたじゃないんだよ。あなたしか描けない絵、それがものすごくすばらしい事なんです。だから、あなたのイワシの絵がサンマに見えてもいいんです。「お前、これサンマじゃないの」と言われたら「イワシだ」と言えばいいんです。
「ひまわり」という絵を描いたすごい画家、ゴッホという人がいます。その人の絵がすばらしいのは、それがゴッホにしかかけないから絵だからです。にている絵がないんです。
これは「ディフォルメ」と言う言葉をつかうんですが、ふつうにある「ひまわり」とはちょっとちがってゴッホの中で想像力がふくらんでいって、ゴッホの心の中を表現した絵があるんです。これは、初めてゴッホの心の中に生まれた「ひまわり」なんです。だから、君がイワシを描いたならそれは初めてこの地球に生まれた大切な命なんです。それを描くんです。絵を描くということは、これ以外にどんな意味があるのでしょうか？　だからうまいへたじゃないんです。あなたにしかかけない絵なんです。みんなと同じものは絵じゃないんです。君がお父さんで、イワシはお母さん、そして絵が子供で、それは初めて地球に生まれたすばらしい命なんだからそれを大切にして下さい。

画家・俳優：片岡鶴太郎　先生