いきもの
Q. 犬も人間のように悲しい時に涙を流して泣いたりするのですか? (小6、女の子)
A. 女の子:田舎のおばさんの家で犬を飼っているんですけど、そのおばさんが亡くなって、お葬式の時、最後の顔を見せたときに、眼にいっぱい涙をためて泣いていたとお母さんが言っていました。
おねえさん:ワンちゃんが泣いていたということかしら? そんなことあるのかしら…。遠藤先生、どうなんですか?
遠藤先生:おばさんが亡くなってみなさん悲しかったと思います。この犬というのは、おばさんに長く飼われていたワンちゃんですか?
女の子:はい。
遠藤先生:そうですか。犬は人間で言う、喜怒哀楽(きどあいらく)の気持ちはしっかり持っています。あなた自身は犬を飼っていますか?
女の子:いいえ。
遠藤先生:もし飼う機会があったら、ご近所の犬でも良いのですが、よく見てほしいんです。とても喜んでいる時、とても悲しんでいる時と怒っている時は、その動作や表情でぼくらと同じような気持ちになっているなと分かると思います。多分、ずっと飼っていてくれたおばさんが亡くなった時にこの犬は間違いなく悲しかったんだと思います。犬は悲しい時、ほっぺたがだらっと力がなくなったり、うつむいていたり、背中を曲げてしまったりと悲しそうにします。あなたのお母さんもその様子を見て、飼い主が死んでしまって、そのワンちゃんが悲しんでいるなと気付いたんだと思います。お母さんだけではなくて、他の人もそう思ったと思います。とても悲しい光景なんだけど、本当のところ、犬がぽろぽろと涙を流すか、と言うことなんだけど、犬は悲しいという気持ちはあっても、人と違って、そのことで涙をたくさん流すということは実際にないと思います。ただ、これは大事なことで、お葬式でみんなが悲しい時に飼われていた犬を見て、そのお葬式に参加していた方たちが「ああ、
犬も泣いているんだな」と思ったんだと思うんですね。そういう風にみんなが受け取る悲しいお葬式を経験したということだと思うんですね。これは科学で悲しい時に犬が涙を流すかという問題ではなくて、ぼくは犬も亡くなった飼い主のおばさんを悲しんでいたんだと思います。そう思うことで、あなたも理解して欲しいですね。
おねえさん:犬に涙はあるんですか?
遠藤先生:涙はあります。眼を潤せなくてはいけないので、ちゃんと涙腺(るいせん)が人間と同じようにあります。ただ、悲しさの表現でボロボロ泣くということは犬や猫にはありません。
女の子:でも、抱っこしていたら腕に涙が落ちたって…。
遠藤先生:お母さんもとても悲しかったと思うんですよ。人間はそういう犬の様子を見て、自分も悲しいと思ったり、時には犬と一緒に楽しんだり、喜んだり、そうやって犬と一緒に生活していくのがとても大切なんですね。犬の涙の量を科学の議論でする場面ではないなと思いますね。
永先生:そうね。あなた、普段、喜んでいるときでも良いから、犬の眼をよく見たことがある?
女の子:ああ、ない…。
永先生:ないでしょ。普段から動物の眼って人間より潤んでいますよね。

京都大学霊長類研究所の遠藤秀紀先生/放送タレントの永六輔 先生

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