いきもの
Q. どうしてイルカは遠くにいても、超音波で話せるのですか? (小5・女)
A. 遠藤先生:”超音波で話せる”というのは、”イルカ同士が言葉を交わせる”という意味ですよね?
女の子:はい。
遠藤先生:そうですね。超音波を使うかどうかは難しいんですけど、「音の波」を使ってイルカは相当遠くの仲間と交信しあっているんですね。イルカに近い仲間がクジラなんだけど、驚くことにクジラは、何百キロ先に自分の仲間がいても会話をすることが出来るんです。たとえば、東京と大阪の程度の距離だったら平気で交信をしているというんですね。陸の上に住んでいる僕らだったら、いくら大声を出しても、同じ街のはじからはじでも聞こえないですよね。だけど、水の中というのは音を伝えるのに非常に有効な環境なんです。だから、水の中の動物は遠くの仲間と話すのに音を使うんです。もちろん、何をしゃべっているかを私達が理解するのは難しいんですけどね。大昔からイルカやクジラは海の中に住んで、音を使って仲間と連絡を取り合って生き続けたので、この仲間は水の中を音でやり取りできるように進化することが出来たんですね。地上の動物では絶対にそんなに離れた距離を言葉でやり取りすることは出来ないですからね。
おねえさん:他の魚もいるし、波もあるし、なんだか乱れて、やり取りが出来ない感じがしますけど。
遠藤先生:そう思いがちですが、ぼくらは空気の中で生きる陸の上の動物だから、声が通じる範囲がすごく狭いんだけど、逆に海の中で生きていれば遠くの仲間と交信することが出来るんですね。水というのは音を伝えるのにとてもいい環境なんです。動物というのは、まわりが水なのか空気なのかという自分の住んでいる環境を上手く利用して生きているんですね。
おねえさん:あれ?理科雄先生、何か計算されていますね?
柳田先生:ええ、水は音を伝えるのに良いというのは、なるほどそうだなと思いました。水というのは空気よりも速く音が伝わるんです。だいたい4倍ちょっとぐらいの時間で伝わりますから、さっき遠藤先生がおっしゃった数百キロメートルというのを、仮に500キロメートルとします。そうすると、「イルカ君A」が何かを言ってから「イルカ君B」が聞くのに5分半かかるんですね。もしこれが空気だったら、20分ぐらいかかることになります。便利ですよね。
遠藤先生:水の中で交信するには、イルカやクジラは体の中に音を出す仕組みを備えていなくてはいけません。逆に、「聞く」という、耳に近い能力も持っていないとダメなんですね。そういう装置がどんどん進化して、イルカやクジラが今の姿に出来上がっていったと考えればいいと思いますよ。


スタッフから:遠藤先生は今回が初登場です。動物の研究で世界各国を歩いているそうです。放送前にも、「象の『鼻』は、人間で言えば上唇なんだよ」などと、動物の面白い話をして下さいました。これからも、みなさんの質問に答えるべく、名古屋から出張してこども電話に出演してくださるそうなので、皆さん、どしどし動物の不思議を質問してみてね!

京都大学霊長類研究所:遠藤秀紀 先生

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