6.December 2000 on air

昭和45年2月10日生まれ、東京都狛江市出身。
獨協大学大学院修士課程修了。

明治6年創業の蔵元・土屋酒造に生まれる。
コンピューターを専攻して大学院に進む。
修士課程を修了後、1年間国税庁醸造研究所で学んだのち、家業の酒造りの仕事に就く。
平成10年東京の地酒として吟醸米酒「夢吟醸桜子」を発売。
好評を博し、同年、国税局優等賞受賞。

黙々とコンピューターに向き合う女性…。パソコンを閉じ、向かった先は、新米の実る秋を迎え、すでに新たなお酒つくりがはじまった酒造元。土屋桜子さんは、東京郊外にある土屋酒造の5代目蔵元です。

土屋さん
「私の祖母がお嫁にきた頃は、『おんなは蔵に行くと塩をまかれる、蔵に近づくな』っていわれてましたが、今はそんな時代ではないですからね。」

お酒作りの魅力について、土屋さんはこう語ります。
土屋さん
「清冽な水と良質の米、そして杜氏の技と真心があって醸される…。 まさに生き物ですね。とても惹かれています」

以前は最先端のコンピューター関連の研究をしていた土屋さん。大学院のころは翻訳ソフトやテレビ電話の研究開発に携わっていました。
蔵を継ぐきっかけは何だったのでしょうか。
土屋さん
「七年前、跡を継ぐはずだった兄が亡くなってしまったんです。あるとき『夢を追いつづけるんだ、実現するんだ』と書かれた兄の詩を見つけたんです。その後、母が倒れ、私が何とかしかければ、私がその夢を引き継がなくてはと…」

蔵に入る決意を固めた土屋さんは、広島県にある国税庁醸造試験所で酒造りを学び、それからはコンピューターが酒造りに活かせないかと研究を続けています。

土屋さん
「コンピューターのプログラミングは1かゼロの世界で形成されていますが、酒造りはコンピューターでは完全に合理化できない、酵母やコウジ菌など様々な目に見えない力が含まれています。酒造りのデータベース的なことは管理できますが、やはり人があっての酒造りですね。お酒造りは“待ち”の仕事ですし」

そして、土屋さんの手で醸されたお酒『夢吟醸 桜子』は、生まれました。

土屋さん
「お酒を飲む方々ひとりひとりに、私たちのまごころが伝わるようなお酒造りを続けること。そのためには本物を追求することが使命だと思っています」

デジタルとアナログの掛け渡し。土屋さんの中にそんな夢の掛け橋があるようです。

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