●片山善博氏「私だったら怒る」(2017年12月3日放送)
翌日の予算委員会は朝から、立憲民主党に始まりに、希望の党と果敢に追及するが、「バラバラになった野党」はそれぞれ短い質問時間の中、あちらこちらに「拡散」し、決め手を欠いたまま「歯がゆい」時間が過ぎていった。太田理財局長は、払い下げ価格に関する森友学園と近畿財務局とのやりとりについて「金額についてはやり取りがありました。(前局長は)予定価格というということでご答弁申し上げた」などとし、質問した希望の党の今井雅人議員は「涙出てきちゃう」とぼやき、ヤジで騒然としたりした。ただ、また異変が起こった。夕方、共産党の宮本岳志議員の、またもや音声データにかかわる質問だった。その音声データは国側が「3メートルより下にあるゴミは(補償を)きっちりやる必要があるというストーリーをイメージしている」とし、請け負った工事業者が「3メートルより下から出てきたかどうかはわからない。そういう風に認識を統一した方がいいなら合わせる」などと、「口裏合わせ」と取れるものだった。これに麻生財務大臣は「事務方の方から説明がございます」とし、太田理財局長は、「近畿財務局の職員に事実関係の確認を行った結果は以下の通りであります」と話し、「平成28年の3月下旬から4月ごろに森友学園側を訪問した際のやり取りではないかというふうに思われます」とあっさり、認めたのだ。
●枝野幸男氏「詰んでる」(2017年12月3日放送)
年末は「税金」の季節だ。翌年度の税制をめぐり、与党内の調整が山場を迎える。昼に自民党本部を訪れると、9階のエレベーターホール前が大騒ぎになっていた。税制調査会の会議が開かれるため、会議室の入り口まで業界団体の人たちでいっぱいなのだ。片や「ゴルフ場利用税、今年こそ廃止」との赤いプラカードを掲げた人たち、片や「ゴルフ場利用税堅持」との青いプラカードを掲げた人たち。双方、議員がエレベーターから降りてくるたび「廃止―」「堅持―」と怒鳴り声を上げる。騒然とする中、会議室いっぱいの議員を前に、宮沢洋一税調会長が「こんちわー。いよいよ○×の議論です。今までの勉強したこと、地元に言われていること、総合的に判断して、できるだけ簡潔に発言してもらいたいと思います」などと挨拶して夕方までの「税金」をめぐる議論が始まった。国会でやり玉に挙がった「佐川国税庁長官」の一方で、「取る方」は着々と議論が進むのだ。「やれやれ」とまた思った。「詰んでる」ものの、そのまま誰も責任を取らず「先」に進めない政治。うんざりする年の瀬だった。
会社に戻りスクラップをめくると、20年ほど前に東南アジアを1か月かけて一人旅をして書き上げた「正月企画」の記事が目に付いた。「無一物中無尽蔵」。かつて、本田宗一郎氏が社長室に飾っていたという格言だ。なにもないからなんでもできる。東南アジアの熱気にほだされて、かつての日本の姿を重ねて、書いた記事の見出しだった。
「なにもかもなくなってしまったのならば、ここから始めればいいんだ」。そんなことを考えると、窓から遠く、国会議事堂の屋根に陽が差しかかっていた。「新しい年が始まるんだな」と思った。
※本原稿は調査情報1〜2月号に掲載されています。
◆石塚 博久 (いしづか ひろひさ)
'62 東京都足立区生まれ。早稲田大学卒業後、'86日本経済新聞社に入社。大阪、名古屋、仙台支局(このとき、「みちのく温泉なんとか殺人事件」に出るような温泉はほとんど行った“温泉研究家”でもある)に。
東京本社政治部で政治取材の厳しい(「虎の穴」のような)指導を受け、新聞協会賞(「閣僚企画」共著)も。
'96TBS入社後は、報道局政治部記者、「NEWS23」のディレクターを経て、「時事放談」制作プロデューサー。
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