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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 

前原誠司氏「安倍政権を倒すために」(2017年10月8日放送)

前原:「安倍政権を終わらせるためなんです。自分のお友達、自分の息のかかった人達には9億円以上の土地を8億円も値引きする。そして52年ぶりの獣医学部については、自分の知り合いしか俎上に乗せない。私はこんな手前勝手な政治を終わらせる、ということの大義の中で、今回の大きな流れをしたということであって、当選のためではありません。そして『一強他弱』ということは、安倍さんしか選べない。これは国民に対して失礼ですよね。やはり大きな野党のかたまりを作る中で、そして国民に選択肢を持って頂く。今回の動きは誰が一番利益を受けるか、それは国民なんですと。国民に対してしっかりと選択肢をお与えすること。例えばアベNOでも良いじゃないですか。例えば原発を本当になくして欲しいという選択肢であればこちらを選んで下さいと。そういった受け皿、選択肢を我々は作ったということでありますので。とにかく安倍政権を終わらせるために。言って見れば冒頭解散、議論を全くせずに、今なら勝てるだろうと思った安倍さんに対して、我々は大きく変えていくための行動をしたということです」

選挙戦当初「小池人気」はまだ、健在だった。土曜の昼下がり、銀座4丁目の交差点には公示前にもかかわらず、街宣車を取り囲んで人だかりができていた。街宣車には「希望の党代表 東京都知事 小池百合子」の大きな垂れ幕が下がり、緑の鉢巻をした都議会議員が「午後2時から街頭演説会を開催させていただきます」と、車上から繰り返しよびかけた。そこへ「主役」の小池代表が白いバンでやって来て、緑のスカーフ姿で車から降りると「あー、百合子さんだ」「小池ーっ」など歓声が上がり、日本維新の会代表の松井一郎大阪府知事、河村たかし名古屋市長とともに街宣車の上に並んだ。交差点に集まった観衆やビルの窓にすずなりになった人たちに手を振ると、みんな手を振り返し大変なにぎわいだった。マイクを持った小池代表は「今回は国政に希望の党を作り、そして国政と連携して国の予算の無駄使い、これらをきっちりとチェックをし。またオリンピック、パラリンピックを間近に控えております。国の都の連携をしっかりしながらこれを成功させていく。しっかりこれからも務めて参りますっ」と、腕に緑のスカーフを巻き、こぶしを振り上げ声を張り上げると、観衆はさかんにスマートフォンを向けてシャッターを切った。

しかし、前原代表の「熱い思い」は、大きな「誤算」を招くことになったっけ。小池代表は合流に向けての話し合いの途中、記者とのやりとりで「排除します」「全員受け入れる考えはさらさらありません」と語り、この一言に、多くの民進党の議員が反発することになる。しかも、「野合批判」を警戒した小池代表が、「憲法改正支持」と「安保法制基本的支持」を盛り込んだ「政策協定書」への署名を求めたことで混乱に拍車がかかり、結局「希望の党合流組」「立憲民主党」「無所属」の3分裂に陥ったわけだ。そして、小池代表が衆院選への出馬を見送り、「希望の党」への「風」は止んだ。

スタジオでは、「少子高齢化」が深刻化する中で「財政再建」への警鐘が相次いだ。希望の党の公約には、前原民進党の、予定通り増税して幼児教育の無償化などに充てる「消費税増税」に対し、「凍結」が盛り込まれていた。


仙谷由人氏「止めようと言うべきだった」(2017年10月15日放送)

仙谷:「前原さんは消費税についてちゃんと主張をして、それならばもう止めようということを言うべきだったと僕は思いますね。反対に今度は立憲民主党を主軸で担ってる人達はわりと消費税回避型が多いんですね。これはもうどうなってるのか、私もやるせない気持ちですね」

武村正義氏「ポピュリズムの競演で」(2017年10月15日放送)

武村:「今回の選挙を見ていて、与野党通じてこの国の巨大な財政赤字に対する責任論って全然ありません。自公さんは消費税を上げることを2回も先送りして、やっとこさ今回はやむを得ないという考えなんですが、それでもあの8割の財源は財政再建に振り向けることが決まっていたのにですね、その2兆円くらいを引っ剥がして、児童教育やら児童保育にばら撒こうとしてるんですから、裏を返せば財政再建に対する全くの無責任さが示されているわけで。野党もしかし、昔の民進党も思い出して欲しいんですけどね。野田(佳彦)内閣では消費税を上げる合意を決めたんです。ああいうまじめさをね、もう一度回復して欲しいと私は思うんですが、凍結だとか中止だとかね。消費税を言えば選挙に損だといわんばかりで、ポピュリズムの競演で終わっているのが今の選挙です。大変残念ですね」

せっかくの「選択」の機会なのに日替わりメニューのようにめまぐるしい目先の混乱で、深刻な政策課題を「正面からまじめ」に語る政治家はいなくなった。手元の新聞のスクラップでは、「教師」と「学生」のやり取りを模して「消費税問題」が語られていた。「学生たち『では、どんな答えならAプラスをもらえるのですか』、教師『これから先の財政を展望すると、消費税率を10%に引き上げても厳しい状況には変わりがないんだ。社会保障を中心に歳出を削減するとともに、少なくとも消費税率を15%へとさらに引き上げる必要がある。そう答えれば成績はAプラスだね』、学生たち『でもそういう主張をするような政党はありませんよ』、教師『そうだね。それこそが財政再建を進めるうえでの最大の問題なんだよ』」(※)…気分を変えようと絵画の本をめくっていると、ゴーギャンの絵が目に付いた。題して「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」。小さくつぶやいて言葉にしたら悲しくなった。そして、約1か月のすったもんだの末、選挙は終わった。10月23日の新聞の朝刊には「自民圧勝 与党310超」とあった。

(※)日本経済新聞2017年9月20日「大機小機」


※本原稿は調査情報11〜12月号に掲載されています。

石塚 博久 (いしづか ひろひさ)
'62 東京都足立区生まれ。早稲田大学卒業後、'86日本経済新聞社に入社。大阪、名古屋、仙台支局(このとき、「みちのく温泉なんとか殺人事件」に出るような温泉はほとんど行った“温泉研究家”でもある)に。
東京本社政治部で政治取材の厳しい(「虎の穴」のような)指導を受け、新聞協会賞(「閣僚企画」共著)も。
'96TBS入社後は、報道局政治部記者、「NEWS23」のディレクターを経て、「時事放談」制作プロデューサー。

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