
オーストリアでノイジードラー湖、ハンガリーでフェルテー湖と呼ばれる国境の湖は、130年前に一時、完全に干上がった「謎の湖」である。水深は平均で1.1m、大半は雨水が溜ったものだ。この地に、ブドウを持ち込んだのは古代ローマ帝国。石灰岩の土壌に、ブドウは根付き、湖畔の町ルストは、ワインの産地として脚光を浴びた。 |
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湖畔は、ヨーロッパでも有数のコウノトリの繁殖地だ。春の訪れとともに、遠く北アフリカから飛来する。泣くことができない彼らは、くちばしを叩き合図する。中世の昔から、コウノトリは幸福をもたらすと信じられ、人々は煙突の上に巣作りの台を設け招いた。巣のある家は、落雷や火災から守られ、ヒナの数だけ子を授かると言うのだ。 |
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ルストの名を知らしめたのは、蜂蜜のように甘い貴腐ワイン。貴腐菌が付着したブドウを、枝のまま乾燥させ、糖度を高めてから醸造する。このワインを愛した皇帝は、1681年、ルストを自由都市として認めた。ワイン農家も、貴族の権利を買い取ることができた。痩せた土地で手塩にかけて育てられたブドウは、収穫量は少ないが、リッチなワインになる。 |
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湖に群生するヨシの丈は3m。放っておくと、湖はヨシに覆われ消える運命にある。冬の内にヨシを刈り取り、屋根を葺く材料として輸出する。漁師が、塩分を含んだ湖で獲るのは、鯉やウナギにナマズだ。アルプス山塊がここで終わり、ハンガリー大平原へとつづく水郷の地には、2000年の時をかけて人間が培った、郷土色あふれる風景がある。 |
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