コラム|『クイーンズ駅伝2016』全日本実業団女子駅伝

2016年11月27日(日)午前11時50分からTBS系列独占生中継!

コラム

2016年11月26日更新 text by 寺田辰朗

第6回決戦前日。
ヤマダ電機と第一生命グループ、ユニバーサルが予定通りの区間エントリー。
豊田自動織機はエースの横江が6区に。
天満屋がダークホースに浮上

内容

レース前日の監督会議でスタートリストが確定した。
ヤマダ電機は第2回コラム、第一生命グループは第3回コラムで想定したオーダーになったが、豊田自動織機はエースの横江里沙(22)が6区に回った。ユニバーサルエンターテインメントも予定通りの顔ぶれで、優勝争いに加わってきそうだ。

4連勝を目指すデンソー、3本柱が予定通りに1・3・5区に入った積水化学が第2グループと思われたが、そこに天満屋が加わる気配もある。
前半型の布陣を敷くチームが多いなか、5区に加えて6区にも有力選手を残すことができたのがヤマダ電機と豊田自動織機、ユニバーサルだが、天満屋が重友梨佐(29)を6区に起用してきたのだ。
JP日本郵政グループと資生堂が、リオ五輪選手を含む強力選手を2〜3区に起用。前半で優勝争いに加わることで、入賞争いを有利に展開させようとしている。

ヤマダ電機と豊田自動織機の強力アンカー決戦か

起用した事情は異なるが、ヤマダ電機が昨年の北京世界陸上代表の西原加純(27)、豊田自動織機が前回5区区間賞の横江里沙と、エースを6区にエントリーしてきた。
ヤマダ電機は3区に石井寿美(21)、5区に筒井咲帆(20)と成長した若手が期待通りに入り、1区には前回のリベンジを期す竹地志帆(26)が走る。
森川賢一監督は「2区と4区を入れ替えた以外は、予定通りです」と手応え十分の様子。
「相手のことは気にせずマイペースでレースをしますが、3区で一度、先頭に立っておきたい。4区で抜かれても、森(唯我・28)なら粘りの走りができる。アンカー勝負になっても西原なら勝てます」

対する豊田自動織機は横江にアキレス腱の違和感が生じ、調整の後れが若干生じたために3区から6区に変更した。だが、長谷川重夫監督は「ベストの6人を選ぶことができた。横江も今は問題ありません。優勝を狙います」と自信を見せる。
「1区の福田(有以・21)が良いし、3区の林田(みさき・20)も良い。2区のルーキー島田(美穂・19)は今年は間に合わないと思っていましたが、秋口になって食事改善の結果で血液状態が良くなり、3000mで9分12秒まで来ました。4区のアン(・カリンジ・27)でトップに立てると思う。西原さんに当てたわけではありませんが、横江のスピードなら西原さんに対抗できます」

森川監督は佛教大監督時代に全日本大学女子駅伝優勝2回、長谷川監督は須磨学園高監督時代に全国高校女子駅伝優勝2回と、異なるカテゴリーの駅伝で全国優勝経験がある。実業団の指導者に転身して森川監督が5年目、長谷川監督は6年目。実業団駅伝でも初の頂点を目指す。

ユニバーサルと第一生命は2区の中距離ランナーで優位を築く?

ユニバーサルは全区間、予定通りのオーダーを組めた。1区の青山瑠衣(27)が10秒程度の差で2区につなげば、日本選手権1500m優勝の木村友香(22)でトップに立てる。木村も「区間賞を取る」と意気込む。

前回欠場した3区の鷲見梓沙(20)も順調な調整だという。仮に3区でトップを譲っても、4区のワンジュグ(26)で再度トップに立つ展開に持ち込める。5区の和久夢来(21)は昨年のプリンセス駅伝で区間賞を取った選手で、6区の中村萌乃(26)はトラックで全国入賞したこともある。
3区の鷲見と5区の和久が崩れなければ、ユニバーサルの4年ぶり優勝も十二分に可能性がある。

第一生命は五輪代表コンビの上原美幸(21)が3区、田中智美(28)が5区に入り、1区も好調の田中花步(25)と主要3区間は想定されたメンバー。
意外だったのは田中華絵(26)がメンバーから外れたこと。10月の国体5000mで5位に入賞したが、その後ヒザを痛めてしまった。それもあって4区に湯田向日葵(19)、6区に佐々木文華(23)と新人2人を起用している。第一生命でメンバー入りしたのだから力はあるが、実業団駅伝は初陣。できれば、3区の上原でリードを奪って湯田にタスキをつなぎたい。

ユニバーサルの木村と同様、第一生命も2区は1500mランナーの飯野摩耶(28)。距離が短いので大きく差が開くわけではないが、前半の流れを作る区間。2区の数秒差が3区の走りに響き、勝敗を分けることにつながるかもしれない。

“今年のチーム”で4連勝を狙うデンソー

3連勝中のデンソーは、2区で小泉直子(23)が区間1位・2位・1位と快走を続けて来た。1区・光延友希(24)、2区・小泉の同学年コンビによるタスキリレーは今年で3年目。一昨年は2区終了時に2位、昨年はトップに立って優勝に貢献してきた。
だが、光延はシーズン前半に、小泉は夏に故障をして練習が中断した。光延は調子が上がってきたが、小泉は好調の倉岡奈々(19)が1週間前に故障をして出番が回ってきた。駅伝の強さに期待する形での起用といえるだろう。
3年前の初優勝時はどこでトップに立てるかわからなかったが、総合力で勝ちきった。だが一昨年と昨年は、光延&小泉コンビでトップかそれに近い位置を確保し、3区の高島由香(28)で先頭に立つ計算通りの勝ち方をしてきた。今年はリオ五輪代表の高島がチームを離れたので、初優勝時のように総力戦的な展開になる。

3区の水口侑子(31)は初優勝時も3区だが、その後はマラソンを最大目標にしてきた。若松誠監督は「スピードはないので速いラップは刻めませんが、周りに人がいると強い」と、駅伝向きであることを強調する。
5区の橋本奈海(25)は前回の6区区間賞選手。今季は距離を延ばして1万mに取り組み自己新をマーク。32分50秒台ではあるが、「昆明の練習を見ていたら、32分半を切る力は十分ある」(若松監督)。
6区の岡未友紀(22)は駅伝の名門・興譲館高出身。2年時に全国高校駅伝で優勝している。入社して5年目の今季、高校時代に出した5000mの自己記録を5年ぶりに更新した。クイーンズ駅伝も毎年、あと少しのところで走れなかったが、今回初めてメンバー入り。小泉が練習を離れている時期は、岡が積極的に声を出して雰囲気を盛り上げたという。若松監督は「走れる喜びを表現してほしい」と期待を込める。
「高島が抜けて、全員が力を出し切らないと絶対に勝てない状況です。昨年までは部員14人中メンバーの6人と、それ以外の8人で差がありましたが、今年は全員にチャンスがあって激しく競争してきました。小泉がよく言うのですが、メンバーが代わったので、今年のチームで優勝を取りに行く。負けたくない、という気持ちをどれくらい持てているかで決まると思います」
常勝チームの気魄が、今年もテレビ画面を通じて見られそうだ。

天満屋がダークホースに浮上

ダークホースと見られていた積水化学は、リオ五輪代表の尾西美咲(31)の状態が上がってこないため、エントリーできなかった。
だが、主要区間の1・3・5区には予定通りに森智香子(24)、松崎璃子(23)、桑原彩(23)と強力同学年トリオが入った。森は前回の6区区間賞で、今季は3000mSCで五輪標準記録に迫った。松崎は2年前のアジア大会5000m代表で、今年の日本選手権でも1万m5位。中距離で培ったスピードがあり、爆発力はチームナンバーワンだ。桑原は初マラソンの名古屋ウィメンズで2時間25分09秒(6位)と好走した。
2・4区のビハインドを考えると、後手手に回らないためには1区の森で好位置につけることが必要だろう。

もう1つダークホースとして評価が浮上してきたのが、マラソンの名門・天満屋である。1週間前の5000m記録会で小原怜(26)が15分39秒47の自己新をマークしたのを筆頭に、西脇舞(23)、前田穂南(20)と好記録で続いた。
昨年の北京世界陸上1万m代表の小原が3区に入り、1500mのスピードが武器の西脇が1区に、マラソンで将来を期待されている2年目の前田が4区に起用された。その結果、ロンドン五輪マラソン代表で、5区の区間賞を3回獲得したことのある重友を6区に回す布陣に。
故障明けの重友が好調でないのは確かだが、ヤマダ電機の西原や、豊田自動織機の横江以上のビッグネームをアンカーに置けたことになる。
選手層の厚さを誇った頃の天満屋は、2区と4区の短い区間で区間賞を取ることも多かった。その伝統が復活すれば、天満屋が3年ぶりに3位以内に入ってきそうだ。
            ◇
クイーンズ駅伝はエース区間の3区が、最も勝敗に影響するのは間違いない。だが、デンソーが3区で独走態勢に持ち込んだ過去2年間と違い、今回は後半まで勝負がもつれそうな情勢だ。
4区の外国人選手でトップに立ったチームが優勝するとなると、豊田自動織機やユニバーサル、デンソーの可能性が大きくなる。
5区勝負になった場合、エース級を残している第一生命、豊田自動織機、ヤマダ電機、積水化学が有利と思われるが、昨年の横江のように、若手や5000mの選手が急成長を見せるかもしれない。デンソーや天満屋が、その可能性のあるチームだ。
6区まで勝負がもつれたら、ヤマダ電機、豊田自動織機、ユニバーサル、天満屋が強力アンカーを置いている。

ここまで名前を挙げなかったが、ダイハツも1区の木崎良子(31)と6区の吉本ひかり(26)は日本代表経験者で、5区の岡小百合(26)も全日本実業団1万mで日本人1位になったことがある。故障明けの選手が多いが、8割でも力を発揮すれば優勝争いに加わるポテンシャルを持つ。
最後の最後まで、テレビ画面から目が離せないクイーンズ駅伝となりそうだ。

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寺田辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。選手、指導者たちからの信頼も厚い。
AJPS (日本スポーツプレス協会) 会員。

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