コラム

2021年11月28日更新 text by 寺田辰朗

第7回日本郵政とワコールは前半の1、3区に東京五輪代表2人を起用
積水化学と資生堂は5、6区の終盤勝負に持ち込む区間配置

内容

レース前日の監督会議後に区間エントリーが発表された。前回優勝のJP日本郵政グループは鈴木亜由子を1区、廣中璃梨佳を3区と、前半に東京五輪代表2人を起用。ワコールも1区に安藤友香、3区に一山麻緒と同じように東京五輪代表2人を前半に配置した。
それに対して前回2位の積水化学は前回3区区間新で、東京五輪10000m代表の新谷仁美を5区に起用。資生堂も5区に五島莉乃、6区に高島由香と実績のある2人を残し、終盤勝負に持ち込む体勢だ。
前半先行型のオーダーを組んだチームが逃げ切るのか、後半型オーダーのチームが逆転優勝するのか。号砲は28日の12時15分に鳴る。

●1区(7.6km):東京五輪代表3人と木村、岡本の区間賞争いか

1区に東京五輪代表3人が集まった。
鈴木亜由子(JP日本郵政グループ)がマラソン、安藤友香(ワコール)が10000m、萩谷楓(エディオン)が5000mの代表だ。出場種目の異なる3人の対決だが、鈴木は10000mで17年世界陸上ロンドン10位、萩谷はプリンセス駅伝3区(10.7km)で区間賞。3人とも10000m(10km)の距離で実績がある。
3人以外では、天満屋は19年世界陸上マラソン代表だった谷本観月、第一生命グループはアジアジュニア5000m優勝実績を持つ出水田眞紀、大塚製薬は5区区間賞を取ったことのある横江里沙を起用。10月に15分39秒71の自己新で走ったデンソー新人の酒井美玖にも注目したい。
ダイハツの大森菜月も注目選手。学生時代の実績は抜群だが、今季は病気で目立った成績を残していない。1区起用には驚かされたが、大森が上位につければ2区に前回区間2位の武田千捺、3区に大物ルーキーの加世田梨花とつなぐことができる。5区には東京五輪マラソン補欠だった松田瑞生も残している。大森の走り次第でダイハツの3位以内が見えてくる。
それでも区間賞となると、東京五輪代表だった3人と、プリンセス駅伝1区で区間新をマークした木村友香(資生堂)、東日本女子駅伝1区区間賞の岡本春美(三井住友海上)らの争いになるだろう。
過去2年間1区で区間4位、6位の萩谷は「3年目なのでコースの特徴はよく知っています。アップダウンが多いのは得意でもあるので、チームのクイーンズエイトの目標のために、しっかり良い流れを作りたい。目標は区間賞です」とコメント。

鈴木は夏の国際大会でダメージを負い、万全の準備ができずにクイーンズ駅伝に臨むことが多かったが、東京五輪後は順調に練習ができている。「例年、(廣中)璃梨佳がトップでつなぐ走りをしています。監督からも良い位置を、取れるなら区間賞も取ってこい、と言われています。みんなに勢いをつける走りをしたい」と、鈴木にしては強気のコメントをしていた。
その背景には、日本郵政が先行逃げ切り型のオーダーを組んだことがある。最大のライバルとなりそうな積水化学は、1区に準エースの佐藤早也伽ではなく、チーム3番手の森智香子を起用してきた。佐藤は3区で、5区の新谷で勝負をするオーダーを組んでいる。
積水化学の野口英盛監督は「1区は30秒以内で十分」と考えている。日本郵政はスローペースにしてしまうと積水化学を利することになる。日本郵政の高橋昌彦監督は「鈴木には区間賞を取りなさい、と言っています。ラストでは萩谷さん、木村さんには勝てません。上り下りにも強いので前半から行きたいですね」と話している。
一斉スタートなので個人の対決も興味深いが、チームのプラスとなるためにその選手が何を考えて走っているのか。そこをイメージしてテレビ観戦をすると面白いだろう。

●2区(3.3km):卜部の2年連続区間賞か、5000m選手が意地を示すか。新人も要注意の区間

2区は前回区間賞の積水化学・卜部蘭が、今年も区間賞最有力候補だ。東京五輪1500mに、この種目日本人初代表として出場し、4分07秒90の自己新を大舞台で出した。チームの初優勝のためにも、2区で日本郵政など前にいるチームを追う必要がある。昨年同様、トップを行くチームとの差を詰めていくのではないか。
しかし5000mを得意とする選手たちが奮起する可能性もある。ヤマダホールディングスは前回1区区間2位の清水真帆を2区に起用し、1区の岡本とセットでトップに立つつもりだろう。デンソーも5000mに15分25秒94を持つ矢野栞理で、1区の酒井とセットで好位置を確保する構えだ。
プリンセス駅伝2区区間賞のユニバーサルエンターテインメント・大西響と、前回4秒差で区間2位だったダイハツ・武田の2人も区間賞候補。
優勝候補チームは日本郵政が小坂井智絵、資生堂が樺沢和佳奈、ワコールが井手彩乃と新人を起用してきた。井手は今年の日本選手権1500m3位、樺沢も1500mで関東インカレに優勝した経歴を持つ。スピードで卜部に対抗できる。小坂井も絶好調という情報があり、新人らしくのびのび走れば、日本郵政が我々の予想以上のリードを奪うかもしれない。

●3区(10.9km):廣中の区間賞は確実。焦点は2位とのタイム差に

3区は最長区間。各チームのエースが登場し、レース前半の山場となる。主役は日本郵政の廣中だろう。東京五輪10000m7位入賞は、今季の個人種目成績では頭1つ抜けた存在だ。また駅伝では、チームのために自身の力を最大限に発揮する。2位以下でタスキをもらったとしても最初からマックスで飛ばし、この区間でトップに立つことが予想できる。
前回の新谷が出した33分20秒の区間記録は異次元のタイムだが、区間歴代2位の34分25秒は大きく上回りそうだ。新谷を5区に残した積水化学との差を、この区間だけで30〜40秒、3区までトータルで1分〜1分半はつけておきたい。
区間2位の可能性があるのは積水化学・佐藤早也伽、ワコール・一山麻緒、ダイハツ・加世田梨花、九電工・加藤岬、資生堂・佐藤成葉、ヤマダホールディングス・筒井咲帆、デンソー・矢田みくにら。2区終了時のポジション次第だが、加世田や加藤のゴボウ抜きが見られるかもしれない。
優勝候補である積水化学と資生堂の“両佐藤”は、4区以降に有力選手を残しているだけに、できれば日本郵政との差を1分以内で3区を終えたい。
移籍1年目のノーリツ・西原加純と日立・石澤ゆかりは、ともにアジア大会代表だった選手。初出場の岩谷産業・中野円花は19年世界陸上ドーハ大会マラソン代表だった。新チームで登場する初のクイーンズ駅伝で、チームの勝敗を左右する走りをする。
優勝経験チームはパナソニックが森田香織、天満屋が松下菜摘、第一生命グループが原田紋里、三井住友海上が田邉美咲、豊田自動織機が川口桃佳。クイーンズエイト・ボーダーラインのチームが多いだけに、エースの走りが重要になる。

●4区(3.6km):外国人選手を持つ資生堂がどこまで追い上げるか?

JP日本郵政グループ、積水化学、資生堂の戦いが後半戦に突入する。
3チーム中この区間で唯一、外国人選手のジュディ・ジェプングティチを擁する資生堂が、トップをどこまで追い上げるか。昨年は区間賞のローズメリー・ワンジル(スターツ)と日本人トップの森田香織(パナソニック)は28秒差があった。日本郵政の三原梓も昨年の全国高校1500m&3000m2冠の強力ルーキーだが、30秒前後は詰められることは覚悟する必要がある。
積水化学は今季3000mと5000mで自己新を出している弟子丸小春で、積水化学の4区選手としては近年で最も強いという。日本郵政の三原との差を縮めることができるのか、逆に広げられてしまうのか。この区間の攻防が、勝負どころの5区に影響する。
区間賞候補は前回区間賞のワンジル、全日本実業団陸上5000m優勝のジェプングティチ、同2位のレベッカ・ムワンギ(ダイソー)、同3位のナオミ・ムッソーニ(ユニバーサルエンターテインメント)、同10000m優勝のカマウ・タビタジェリ(三井住友海上)、18年大会区間賞のヘレン・エカラレ(豊田自動織機)ら。
日本人トップ候補は、前回区間日本人2位の下田平渚(ダイハツ)、プリンセス駅伝1区区間2位の小海遥(第一生命グループ)、三原、弟子丸ら。17年大会から3区、5区、3区と3年連続区間賞を取った堀優花(パナソニック)の復調ぶりにも注目したい。

●5区(10.0km):日本郵政・太田と積水化学・新谷の勝負の帰趨はいかに?

日本郵政、積水化学、資生堂の勝負がいよいよ佳境に入る。
日本郵政は太田琴菜で、入社4年目でクイーンズ駅伝は初出場。立命大時代には全日本大学女子駅伝優勝(エース区間で区間新)など活躍したが、10000mの自己記録は33分12秒15である。
それに対して積水化学・新谷は30分20秒44の日本記録保持者。昨年は3区の区間記録を1分10秒も更新した。今シーズンの新谷の状態から、昨シーズンより40秒〜1分程度悪いと仮定しても、1分半程度のビハインドなら新谷が逆転する計算になる。
しかし日本郵政の高橋監督は太田に自信を持っている。「個人記録の比較で2分の差があっても、その通りにならないのが駅伝です」と前日の監督会議後に話した。太田は高校、大学と駅伝の強豪校で大舞台を経験し、「重圧があってもビビらない。最後で練習を外したり弱音を吐いたりしない」という。入社して3年間、故障で駅伝を走れなかった。「太田なら緊張よりも、走れることへの思いの強さが勝る」と期待できる。練習もかなりできているようで、10000mのタイム以上の走りをする可能性は十二分にある。
新谷の方も、第6回記事で紹介したように、この1年間のチームメイトの頑張りが彼女の背中を押している。東京五輪の失敗でメンタル的にも大きく落ち込んでいたが、チームメイトと駅伝を走る目標があったことで前向きになれた。
太田と新谷の争いは、気持ちの面の充実が左右するかもしれない。
資生堂の五島莉乃も、今年の日本選手権5000m7位など実績は侮れない。積水化学の佐藤早也伽に先着しているのだ。資生堂の岩水嘉孝監督は「年間を通して走れているし、五島は1人でもガンガン押して行くタイプ。10kmの距離への適性も高い。4、5区で勝負を決めたい」と期待している。
資生堂は6区にリオ五輪10000m代表だった高島由香を残している。駅伝でも3年連続3区区間賞の実績を持つ。五島でトップに立たなくても、アンカー勝負に持ち込めば勝機は十分ある。
上記3チーム以外では、ダイハツが松田瑞生、エディオンが細田あい、デンソーが小笠原朱里と、トラックの個人種目や駅伝で実績を持つ選手を配置している。だが3人とも、故障明けなど準備は万全ではない。
好調なのは九電工の逸木和香菜で、9月の全日本実業団陸上では積水化学・佐藤、九電工・加藤に続き日本人3位に食い込んだ。3区の加藤で上位に上がっていれば、逸木がチーム最高順位の4位より上にチームを引き上げる期待も持てる。

●6区(6.795km):宮城開催初のアンカー逆転はあるのか?

最終区間まで実績ある選手を残すことができるチームは限られる。
先ほど紹介したように実績では資生堂・高島が頭抜けている。だが、6区に回ったということは、完全に仕上げられなかったということだろう。それは日本郵政の大西ひかりにも同じことが言えるかもしれない。
もちろん、日本郵政なら太田の、資生堂なら五島の状態が良かったので、大西と高島が6区に回った可能性もある。その場合、そのチームの総合力はかなり高いことになる。実際にどうなのかは、蓋を開けてみるまでわからない。
その点、積水化学の木村梨七は10月に、5000mで15分35秒61と自己新で走ったばかり。直近のレースでの実績がある。積水化学の野口監督は「仙台育英高で(1年、3年と)2度、全国高校駅伝の優勝テープを切っている選手です。コース的にも似ていますし、10〜15秒後ろで中継してもやってくれそうな気配がある」と期待している。
前半型のオーダーを組んだ日本郵政が勝つなら、3区終了時に大きなリードを奪って逃げ切るパターンで、4〜6区でも並ばれることはないだろう。
資生堂が勝つとすれば、「4〜5区で決めたい」(岩水監督)と話している。コラム第1回で紹介したように、宮城開催になって優勝チームが先頭に立った一番後方の区間は5区である。
高島や木村が6区で逆転すれば、宮城開催になって初めてアンカー区間の決着となる。

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寺田辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。選手、指導者たちからの信頼も厚い。
AJPS (日本スポーツプレス協会) 会員。