新時代の心臓手術─ロボット手術とは?|日曜劇場『ブラックペアン』

SURGICAL SYSTEM

新時代の心臓手術─ロボット手術とは?
第5話から登場する手術支援ロボット・ダーウィン(※)
最先端の“ロボット手術”について、
監修先生のお話を基に紐解いていきます。
(※)高精度の3D内視鏡を備え、超精密な手術を行う実在の内視鏡下手術支援ロボット・ダビンチが劇中では「ダーウィン」という名称で登場します。

vol.5心臓ロボット手術が有効な疾患とその事例

これまで「ブラックペアン」で出てきた心臓の疾患は「大動脈解離」「僧帽弁閉鎖不全症」「粘液腫」などでしたが、私が実際の心臓ロボット手術で割とよく扱う疾患に「心房中隔欠損症」(ASD)というのがあります。今回はその事例をご紹介します。

◆ 心房中隔欠損症(ASD) とは

心臓の右心房と左心房の間にある「心房中隔」と呼ばれる壁に、生まれつき穴(欠損孔)が開いている疾患です。先天性心疾患の約6〜10%を占める病気で、男女比1:2、女性に多いと言われています。また成人になってからわかることが多い先天性の疾患で、30、40 代になって見つかる方が多いのです。実は成人で一番多い先天性心疾患です。この病気にかかるのは人口の約3%ほどいると言われ、手術になるのはそのうち10%くらいです。つまり 1000 人に 3 人くらいの割合の方が手術になり、1年間で手術を受ける人は成人で500 人程、子供も500人程です。

<心房中隔欠損症(ASD)のメカニズム>
正常な血液の流れ(血行動態)では、肺で酸素を取り込んだ血液(動脈血)は左心房から左心室へ流れ込み、そこから全身へ送り出されます。心房中隔欠損症(ASD)の場合は、動脈血の一部が穴(欠損孔)を通って左心房から右心房に流れこみ、再び肺に戻って肺循環に入ってしまいます。つまり、右心房や右心室の負担が増え、特に肺への血流が増加することで肺うっ血や肺高血圧を引き起こしてしまうのです。

<なぜ起こる病気か>
この穴は、胎児のうちはある左心房から右心房に血液を流すためにあるのです。胎内にいる間は肺を使っていないので、全身から戻ってきた血液は母体を使ってキレイにしているのですが、その母体から戻ってきたきれいな血液を肺に送っている仕組みの一つということになります。通常は誕生して肺で呼吸を始めた瞬間にその仕組みが終わり肺呼吸になるのですが、その際に中隔の穴も数日かけて完全に閉じるのが普通。しかし、閉じ切らないで開いたままになっているのがこの疾患なのです。

<心房中隔欠損症(ASD)の主な症状>
◇成人の場合
ほとんどの人は思春期ごろまで自覚症状はありませんが、30歳になるころまでに肺血管の血圧が高くなり、呼吸困難などの心不全症状、不整脈などの症状が出ます。合併症として心房細動、心不全、肺高血圧などがあります。肺高血圧は重症化すると手術ができなくなります。治療を行わない場合、40〜50歳に到達できる割合は50%程度といわれています。
また通常、静脈内にできた血栓などは、心臓に流れ着いても肺に取り込まれて処理されますが、それらが運悪く右心房から左心房に流入してしまった場合は、脳動脈へ流れ込んで脳梗塞や脳膿瘍を引き起こすことがあります。(奇異性脳性塞症)

◇新生児や乳児の場合
新生児や乳児でも、左心房から右心房に流れる血液が多い場合には、呼吸困難、風邪にかかりやすい、体重が増えない、運動が長続きしないなどの症状が出ることがあります。呼吸困難など重篤な症状がある場合には手術が必要です。

◆ 心房中隔欠損症(ASD)の診断と主な治療

聴診、胸部レントゲン写真、心電図、心臓超音波検査などを行い、心房中隔欠損症(ASD)と診断された場合は、さらに詳細な検査を行って手術適応についての検討が行われます。
治療法には、カテーテル治療、外科的治療の2つがあります。

<カテーテル治療(アンプラッツアー法)>
穴を閉じるための栓(閉鎖栓「アンプラッツアーセプタルオクルーダー」)を、カテーテルを使って心臓の中に留め置きます。アンプラッツアーは形状記憶合金の細い線から作られたメッシュ状の閉鎖栓で、穴の両側から挟みこんで穴を閉じます。
ただし、カテーテル治療は、手術後に抗凝固療法を行う必要がありますし、また部位によってはカテーテルでは対応できないケースや金属アレルギーの方には使用できません。途中で脱落したり、近くの大動脈の壁をずっと圧迫するため孔が開いたりするリスクもあります。最近では、手術後何か月〜何年も経ってから、偏頭痛や視野の異常(閃輝暗点)があらわれるといった症例も報告されていますので、よく検討することが必要です。

<外科的治療>
右心房を切開し穴(欠損孔)を直接縫って閉鎖、あるいはパッチで閉鎖します。穴の大きさ、位置などにかかわらず、確実に穴を閉じることが可能です。
心房中隔欠損症の手術は、心房の仕切りにある穴を閉じるだけの単純なものです。これまで多く行なわれてきた従来の手術は、胸の真ん中を20〜25?切開(胸部正中切開)して行うものですが、チーム・ワタナベでは成人の心房中隔欠損症(ASD)の手術に対しては、手術支援ロボット「ダビンチ」を駆使し、数個の小さな穴を開け内視鏡だけで手術を行う低侵襲手術を実施しています。

<なぜロボット手術向きなのか>
もともと穴を閉じるだけの比較的簡単な処置ですし、中隔は柔らかいので縫いやすく、心臓の手術としては易しい部類なのです。単純な手術だからこそ、胸に大きな傷をつけて、回復に時間がかかり、傷の痛みなどの後遺症に苦しむことがない方が患者さんへの負担も軽減されると考えます。
ただ制度としては、現在 心房中隔欠損症(ASD) は保険適用にはなっていない疾患なので早く「保険適用」されることを願っています。

◆ 心房中隔欠損症(ASD)について知っておいてほしいこと

実は、心房中隔欠損症(ASD)の患者さんの多くは成人になるまで自覚症状がないことが多いです。また、年齢を重ねると同じような症状で動脈硬化、心筋梗塞といった他の疾患の可能性もあります。
この心房中隔欠損症は、症状だけでは自分では判断の付かない病気ですし、手遅れになると手術ができなくなる病気ですから、「息苦しさ」「不整脈」といった異変を感じたら、どうか病院で診断を受けてください。

PROFILE

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ニューハート・ワタナベ
国際病院総長
日本ロボット外科学会
理事長
渡邊わたなべ ごう
1958年、東京生まれ。
心臓血管外科医、ロボット外科医 (da Vinci Pilot)、心臓血管外科学者、医学博士、(心臓血管外科専門医、日本胸部外科学会指導医)等々。
ドイツで最年少心臓移植執刀医として実地の手術を担当、2年半ドイツで活躍。
"天才心臓外科医""天使の手"と称され、現在外科医の世界で圧倒的名声を得て、その至高かつ芸術的と称される手術で世界のベストドクターに選ばれる。

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