監修ドクターが解説 “片っ端から、教えてやるよ。”|日曜劇場『ブラックペアン』

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監修ドクターが解説 “片っ端から、教えてやるよ。”
本作の医療監修を担当している山岸先生に、
「ブラックペアン」にまつわるさまざまなギモン
お答えしていただくコーナーです

vol.257話医学的解説②

渡海先生の帝華大での手術

心臓外科の手術は究極のチーム医療で、手術は執刀医、第1助手、大学病院などでは第2助手、研修医など、多いときには4、5人が手術に入ります。執刀医、第1助手、第2助手まですべての手術工程でそれぞれがやることが決まっており、例えば大動脈を縫う時は執刀医は右手に持針器で4-0の針糸を持って、左手にドベーキーをもって、第1助手は右手で糸をさばいて、左手にドベーキーを持って縫いやすいように大動脈の一部を持ってあげたり、第2助手は右手にサクションを持って血液を吸引して、左手にドベーキーを持って周囲の組織をよけたりと、一瞬でも第1助手、第2助手の手が遅れると執刀医にすごく怒られる。逆に言うと、普通は助手の補助がないと、執刀医は手術をする事は出来ないこととなります。
ただ、「ブラックペアン」では、特に渡海先生はあまり助手の力を必要とせずに手術をしているシーンが多い。2話でもスパルタ渡海先生は世良先生に1人で人工血管を縫合させていました。サッカーのブラジル代表ではないですが、個の力が突出していないと、このような事は出来ません。一流の外科医は周りがどんな状況でも、自分の力を発揮できるものです。違う病院に出張して手術を行う事もあり、そのようなアウェーの状況でも通常と変わらないパフォーマンスを発揮できます。ほんの数分一緒に手術するだけで、助手の実力がわかり、適切に指示を出してオペを完遂してしまいます。渡海先生の実力はこのレベルをさらに超えていて、ほとんどの手術をほぼ1人で出来てしまう。その突出した実力を象徴しているシーンが今回の帝華大での手術でした。と言いつつも、このシーンを1人でオペしている感じにしたいと最初に提案してくれたのは二宮さんでした。「1人で出来るようなオペありますか?帝華大でのオペ1人でやりたいんだよね」と言われ、冠動脈バイパス術なら看護師さんと2人でやるような事もあったし出来ると答えました。看護師さんも必要ないように1人で出来るように道具も用意するからと言って、色々用意して今回のオペシーンとなったのですが…この突出した手術の実力、能力を表現する方法を、全く心臓手術を知らない二宮さんがふと思いつくって凄いなと正直驚きました。
さらに監督とも話して、オペを凄い勢いで始めて、怒涛の指示出しをする感じを出したいと相談を受けたので、冠動脈バイパスに必要な道具を挙げていくというセリフが出来上がりました。
いつも当日にセリフを足して欲しいときは、なるべく専門用語を視聴者にわかりやすく言い換えた形で1つか2つ加えてもらう時があるのですが、今回は
「スタビライザー、CO2ブロアー、ホルダー、ビーバーメス、マイクロセッシ、マイクロシザーズ、マイクロ持針器、8-0、2.0のシャントチューブ」という道具の羅列を当日に加えてもらったのです。
冠動脈バイパス術は3話でも出てきましたが、詰まりかけたり、詰まってしまった心臓の周りにある冠動脈に自己の血管(グラフト)を縫い付けて新たに血流を流す(バイパス経路を作る)手術ですが、内胸動脈というバイパスのグラフトを採るための開胸器をつけるところから(これが結構難しい)、イスに座って内胸動脈を採るところの目線はどれくらいの角度で、右手はこんな感じで、左手はこういう角度で、その間にあの長いセリフを言ってもらい、助手にサフェナ(saphenous vein:足の静脈でバイパスのグラフトに使います)採れと指示を出す。内胸動脈の剥離が完了したら、助手にサフェナ採るの遅いよと、自分でサフェナを採り出す。バイパスの吻合(グラフトと冠動脈を縫い合わせること)は、左手にマイクロセッシを持って、右手にビーバーメスで冠動脈を剥離して切って、マイクロシザース(小さいハサミ)で切開を大きくして、シャントチューブを入れて、グラフトを切開して、8-0で吻合する。吻合の時の姿勢は少し覗き込むような体勢で、このくらいのスピードで縫って糸結びもこんな感じでお願いします。
と言うと、「はい、わかりました」と言って…本番はすべて出来てしまう。
これをモニターで見たとき、思わず監督と目を見合わせて笑ってしまいました。正直出来ないと思っていましたので。内胸動脈を剥離する時のセッシと電気メスの角度、目線、雰囲気も一流の心臓外科医、あの長ゼリフも完璧に覚えていたのです。お前サフェナ採れの発音も、遅いよという声のトーン、サフェナを採る仕草と冠動脈を吻合するときの姿勢、道具の順番、道具の向き、扱い方、道具を置いたときの金属音、全ての所作が一流の心臓外科医で、以前、心臓手術はart and scienceだと書きましたが、本当に何かの芸術作品を見ているような感じがしたのです。
術野にあった青いエンピツみたいな道具がCO2ブロアーといい、血管(冠動脈)から出る血液に二酸化炭素を吹き付けて吹き飛ばして、縫合しやすくするための道具です。本来なら助手が持つ道具なのですが、ホルダーを用意して、渡海先生がセッティングできるようにして、助手がいなくても1人でできるようにアレンジしました。帝華大のアウェーのオペ室で、すべて1人で冠動脈バイパス術を完遂してしまう、飛び抜けた外科技術を見せつけたシーンでしたが、それ以上に二宮和也さんの能力に度肝を抜かれたシーンでした。
そのシーンのラストで、
「腕のない医者は死んだほうがいい。お前の論文に書いていいぞ」
「患者がいる、そいつを助ける。以上。」
「どこ行こうと、俺のやることは変わらないんだよ」
と心を激しく揺すられるようなフレーズの連発。
ここまで訴えてくるドラマありますか。
次回はカエサルによる大動脈弁置換術と左心耳血栓について解説します。

PROFILE

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イムス東京葛飾総合病院 
心臓血管外科
医長 山岸俊介
日本外科学会外科専門医
日本心臓血管外科学会専門医
2006年慶應義塾大学医学部卒業。
仙台厚生病院、埼玉医大国際医療センター、イムス葛飾ハートセンターを経て、現在イムス東京葛飾総合病院心臓血管外科医長。
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