監修ドクターが解説 “片っ端から、教えてやるよ。”|日曜劇場『ブラックペアン』

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監修ドクターが解説 “片っ端から、教えてやるよ。”
本作の医療監修を担当している山岸先生に、
「ブラックペアン」にまつわるさまざまなギモン
お答えしていただくコーナーです

vol.174話医学的解説③

4話の最後は、小春ちゃんの手術について解説していきます。
7歳の小春ちゃんは、幼少期から僧帽弁閉鎖不全症を患っています。先天性僧帽弁閉鎖不全といって生まれつき僧帽弁がうまく閉じない病気です。同時に輸血アレルギーと不規則抗体があって、輸血ができない。出血をなるべく少なくしないと、治療困難な状況です。
ここで高階先生が渡海先生に言います。「私がスナイプに目をつけたそもそものきっかけは小春ちゃんを助けたいと思ったからだ。あの子がいるからスナイプがある」。
日本にスナイプが持ち込まれた目的は小春ちゃんだったのか!撮影以外でも高階先生は小春ちゃんにメロメロでした。
一方子供の心臓病が出てきてしまいましたので、僕の解説はどんどん大変になってしまいます。また長くなりますが、お付き合いください。

小児循環器とカテーテル治療

現在の日本の循環器(心臓)疾患(病気)の治療は子供(小児)と大人(成人)で分かれています。それぞれ内科と外科がありますので、小児循環器内科と小児心臓外科、成人循環器内科と成人心臓血管外科があるということです。
我々外科の医者は内科の先生方が色々検査をして患者さんの治療方針を決めて、カテーテルという血管内に管を入れて治せる病気は内科の先生が治してくれて、それでも治療困難な患者さんが外科に紹介されて我々は手術をします。心臓外科の治療(手術)はいわば、内科の先生方の治療の1選択枝に過ぎません。野球の守備に例えるならば、内科の先生方は患者さんの治療方針の監督かつ内野手、一部外野に飛んだフライや内野の間を抜けたゴロを我々外野手である外科に任せるような印象です。
成人循環器と小児循環器は、感覚としては本当に全く別分野であります。ただ単に大人を小さくしたのが子供、赤ちゃんではありません。小児循環器は赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる頃から中学生さらには成人先天性心疾患の大人まで診察しなければなりませんし、小児循環器にかかるお子さんの心臓はそのほとんどが先天的な異常(生まれた時からある心臓の構造異常)で、その異常の形態は数えきれないほど程たくさんあります。また小春ちゃんはまだ2年生くらいなので大きい方ですが、赤ちゃんとなると小さい場合は1500gの赤ちゃんの心臓を手術しなければなりませんので、本当に選ばれし外科医しかできない緻密で繊細な手術になります。僕も小児心臓外科で3年ほど勉強させていただきましたが、小児循環器の先生方の患者さんに対する情熱は本当に凄まじく、多くのことを勉強させていただきました。その凄まじい情熱を高階先生も持っていて小春ちゃんのためにアメリカまで行ってスナイプを日本に持ち帰ってきた。
「だがこのルートでは行き着く先は右心房だ。僧帽弁につながる左心房との中隔、その壁の突破がカテーテルでは無理だ」
「だからスナイプが生まれたんだ。カテーテルは過去のやり方ですよ」
高階先生のこの発言は少し誤解を生んでしまうかもしれません。少し言葉が省略されてしまっていますので補わさせていただくと
「だが太ももの根元の静脈からカテーテルという管を進めていって行き着く先は右心房だ。僧帽弁は左心房と左心室を隔てていて、右心房から左心房に行くには心房中隔という壁がある。その壁の突破は小児ではすごく難しい」「だから小春ちゃんのような輸血ができないため、大掛かりな人工心肺を使用する手術ができない子供の僧帽弁手術をするためにスナイプが生まれたんだ。小児ではカテーテルによる治療はもう過去に検討済みですよ」
長々と補わせていただきました。
つまり右心房と左心房の間の中隔を突破することは、成人の治療では当たり前のように循環器内科の先生方が行っています(ブロッケンブローとか言ったりします)。これを小さい子供でやることは、かなり難しいようです。そもそも壁が非常に小さく弱いためらしいです。
高階先生から言わせると、カテーテルによる治療はもう何度も検証したぞ。ということなのです。しかし渡海先生は小春ちゃんの心房中隔の壁に穴が空いているのを発見し、そこを突破口に治療できると言います。
この穴は卵円孔開存であったり、心房中隔欠損とか言ったりします。実際に中隔に穴が空いている方はいらっしゃいます。現在では治療適応の方は、カテーテルによるプラグ閉鎖であったり、手術での閉鎖を安全に施行できます。
以前スナイプとは?のところでも少し述べましたが、我々外科が行う手術よりもカテーテルによる治療の方が低侵襲(体に負担がかからない)と言われており、世界の僧帽弁治療はカテーテルによる治療に向かって進んでいます。つまり決してカテーテルは過去のやり方ではないのです。小さいお子さんの僧帽弁治療に関してはもう過去に何回も検証したぞという意味であると認識していただければ幸いです。
かくして、渡海先生の案により小春ちゃんの僧帽弁手術は終了したのですが、この方法が我々循環器疾患に携わる医療関係者の最終像、未来の最先端の治療になると思います。

渡海先生とカテーテル

縫ったり結んだりの手術シーンは今まで何回も撮影ありましたが、今回の小春ちゃんの治療シーンではカテーテルという管を扱いました。もちろん皆さんカテーテルは初めてで、あの髪の毛みたいなワイヤーの扱いを撮影前にみんなで練習しました。針を小春ちゃんの足の付け根の静脈に刺して、そこにガイドワイヤーという針金みたいな管を通していくのですが、これ意外と我々でも難しく、手がプルプル震えてしまう人なんかいたりして、なかなか針の穴に入らない時があります。なんか毎回褒めているので嘘っぽいと思われるかもしれませんが、二宮さんはこの針にガイドワイヤーを入れるのが非常にうまく、撮影では毎回一発で成功させていました。まさに手術だけでなくカテの技も一級品でありました。あのカテーテルのシーンは、渡海先生のカテーテルさばきも高階先生のフォローも、猫田さんの動きもリアルリアルとうちの循環器の先生にもお褒めの言葉をいただき大変満足であります。
次回5話はいよいよダーウィンが登場します。僕はまだロボット手術は勉強中ですが、日本のロボット手術の最高峰の先生も監修されていますので医学的にも必見です。渡海先生の今まで以上にめちゃくちゃかっこいいシーンがたくさんあり、鳥肌モノですのでお楽しみに!

PROFILE

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イムス東京葛飾総合病院 
心臓血管外科
医長 山岸俊介
日本外科学会外科専門医
日本心臓血管外科学会専門医
2006年慶應義塾大学医学部卒業。
仙台厚生病院、埼玉医大国際医療センター、イムス葛飾ハートセンターを経て、現在イムス東京葛飾総合病院心臓血管外科医長。
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