監修ドクターが解説 “片っ端から、教えてやるよ。”|日曜劇場『ブラックペアン』

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監修ドクターが解説 “片っ端から、教えてやるよ。”
本作の医療監修を担当している山岸先生に、
「ブラックペアン」にまつわるさまざまなギモン
お答えしていただくコーナーです

vol.133話医学的解説②

田村隼人さんのスナイプ手術

前回の解説の図1を見ていただければわかると思います(ドラマの中のCGでも非常にわかりやすいとも思います)が、肥大型心筋症で左室の内腔が非常に狭くなっていますので、その中をスナイプを通していくのは至難の技です。
本来ならば、ここは正中切開して普通に僧帽弁手術をするべきであるとも思いますが、早期回復を望む田村さんですので、少し無理をしてでも患者さんの希望を叶えようとするのは医師としてはあり得る姿勢であります。あとはまだ若いですので、できるのであれば正中切開(正中開胸)は避けたい。
そんな中、田村さんの手術が始まるのですが、最初渡海先生はエコーの画像を見て、心尖部の筋肉が弱いと判断し手術を止めます。心尖部の筋肉だけ弱い原因をあえて説明するのなら、左室の筋肉がもりもりでそこに冠動脈からの血流が取られてしまって、心尖部まで冠動脈からの血流が届かずに筋肉が薄くなってしまったと言えるでしょう。
この後高階先生と世良先生は3Dプリンターで田村さんの心臓を完璧に再現しますが、この技術は実際の臨床でも使われていて、例えば大動脈基部(大動脈の根元)の形成術(作り変える手術)では3Dプリンターで型を作って、それを基にイメージして手術をする場合があります。
また「心尖部から28mm左からスナイプを挿入する、さらに83度の挿入角度でアプローチすれば肥大した心筋を傷つけずに僧帽弁にたどり着ける。逆に言うとそれ以外ルートないんですけど。」、この発言はもう未来の発言ですね。スナイプのような医療機器が将来臨床で使われ始め、何年も時が経ち、まさに田村さんのような患者さんに使われるようになった時に初めて出てくるセリフです。数学がすごいできる人って、どんな計算過程、論理展開が長い問題でもいきなり答えを言うことがあります。センター試験の数学とか全問を10分弱くらいで解いてしまう。何の計算もせずに、どんどん答えを埋めていくんです。そんな数学的なひらめきと同じような外科的かつ物理的、空間把握的なひらめきが渡海先生にはあるのかもしれません。そうでないとあの28mm、83度という数字は出てこない。
数字が割り出された後、再度田村さんの手術が始まりました。肥大型心筋症は不整脈の合併が多く…、ちなみに不整脈とは心臓の規則正しい拍動(洞調律とか言ったりします)が
乱れることをすべてひっくるめて不整脈と言います。ですので、不整脈には色々な種類がある。脈の乱れ方によって色々種類があるのです。馬がパカパカ規則正しく歩いているのが、酔っ払って(酔っ払うことがあるかどうかわかりませんが)パカパッカパカパカパカパッカ
となることを心房細動とか言ったり、怒って猛烈ダッシュすることを心室頻拍とか言ったり、たまに何を思ったかジャンプしちゃう、つまりパカパカジャンプパカパカパカジャンプのジャンプを期外収縮と言ったり。乱れ方にそれぞれ名前が付いているのです。でそれぞれの乱れ方(不整脈)には、それぞれのなだめかた(お薬やカテーテル治療など)があります。
放っといても大丈夫な乱れ方もあります(例えばたまにジャンプしてしまうなんていう乱れ方は放っておいても問題ない場合が多いいです)。中にはそのまま崖からすぐに落ちてしまうような危険な爆走もあるのです。
つまり不整脈にはすぐに治療しなければいけない危険な不整脈(爆走して崖から落ちてします)と、放っておいてもいい危険ではない不整脈(ただ少し酔っ払ってフラフラしているけど飼い主のところには帰れそう、お酒もすぐに抜けそう)があるわけです。
ここで肥大型心筋症を馬に例えると、闘争心むき出しの全く騎手の言うことを聞かない筋肉隆々の暴れ競走馬と言えます。少しムチで刺激するだけで暴走して騎手を振り落とし、崖から落っこちてしまう。なので、スナイプによって筋肉を刺激してその刺激所が悪いと、致死性不整脈を起こして命が危なくなってしまうのです(致死性とはまさに死に到るほど危険という意味です)。。
「田村さんPSVTになりました‼︎」
「PSVT⁉︎左室心筋に触れた?」
「いや触れてない。ただの不整脈だ。ベラパミル入れとけ。」
を筋肉隆々の競争馬(ブラックインパクト)に例えると
「ブラックインパクトがいきなり真直ぐ走り出しました‼︎」
「真直ぐ走り出した⁉︎間違えてムチ入れた?」
「いやムチは入ってない。ただお腹が空いて走り出しただけだ。甘〜く煮たニンジンあげとけ。」
最後はかなり強引になってしまいましたが、まあこんな感じになります。
なぜ普通のニンジンではなく甘く煮たニンジンかというとブラックインパクトは甘く煮たニンジンをあげるとすこぶる落ち着くからです。
これは肥大型心筋症に良く合う薬があるということで、ベラパミルという心臓の筋肉の収縮と脈の速さを抑えてくれるような薬が良く効くといわれています。もう何種類か使用する薬はあるのですが、渡海先生はベラパミルを選択しました。
結局は真直ぐ走り出したブラックインパクトを抑えることができず、高階先生は渡海先生に代わり、渡海先生が無事スナイプ手術を終えるという流れでした(心臓の早い拍動を感じながら一瞬の隙をみてスナイプを通し、無事人工弁を留置しました!! )。
なんだか暴走した記事になってしまいましたが、次回は楠木さんの手術を振り返ります。

PROFILE

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イムス東京葛飾総合病院 
心臓血管外科
医長 山岸俊介
日本外科学会外科専門医
日本心臓血管外科学会専門医
2006年慶應義塾大学医学部卒業。
仙台厚生病院、埼玉医大国際医療センター、イムス葛飾ハートセンターを経て、現在イムス東京葛飾総合病院心臓血管外科医長。
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