監修ドクターが解説 “片っ端から、教えてやるよ。”|日曜劇場『ブラックペアン』

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監修ドクターが解説 “片っ端から、教えてやるよ。”
本作の医療監修を担当している山岸先生に、
「ブラックペアン」にまつわるさまざまなギモン
お答えしていただくコーナーです

vol.102話医学的解説②

「今回は世良先生の実力」について解説します。

世良先生の実力

研修医の世良先生ですが、命を助けたくて医師となり、心臓外科医を目指し、命に対して真摯で、まじめで、一生懸命で、日々の努力を惜しまず、土下座までして、涙ながらに熱い思いを上司にぶつける。こんな先生いるの?と思われる方がいるかもしれませんが、実際我々は世良先生と同じ思いを持っていて、同じような研修医はいます(いるはずです)。竹内涼真さんも今回はカッコ悪い役と自ら言っていますが、実は今回の2話で、世良先生はかなりの実力を持っている非常に優秀な研修医であり、将来有望な外科医であるということがわかります。決してダメダメではありません、むしろ末恐ろしいほどの外科医としての能力を持っています。
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1. 腹部大動脈瘤人工血管置換術に関してかなり勉強している。
小山さんが救急搬送され手術室に入り、そこに世良先生が入る場面。「出血が少ない場合は腎静脈を同定して、腎動脈下で腹部大動脈を遮断。尚その際は確実に腹部大動脈を遮断しなければならない」というようなセリフ(ちょっと間違っているかもしれませんがすいません)を言います。研修医でここまで勉強している人はまずいません。出血が少ない場合つまりバイタル(血圧、脈拍等)が安定している場合とそうでない場合で方法が違うことをきちんとわかっている。腎静脈と腎動脈の解剖をきちんと把握している。また手術の肝をキチンと抑えています。確実に腹部大動脈を遮断しなければならないというのは非常に大切なことで、きちんと大動脈を遮断しないと大出血してしまい、手術になりませんし、患者さんは命の危険にさらされます。このセリフだけで非常に優秀であり勤勉であることがわかります。
2.持針器とセッシ(ドベーキー)での針の持ち替えが恐ろしく安定している。
小山さんの緊急手術(腹部大動脈瘤人工血管置換術)の時、渡海先生に「やれよ!」と言われて縫合する場面。結局失敗して大出血してしまうのですが、世良先生は外科医として非常に高い能力を持っていることが一発でわかる場面があります。持針器(針を持つ器械)とセッシ(ドベーキー)で針を持ちかえる場面があるのですが、あの場面、普通の人がすると手が震えてしまうのです。ほとんどの人が震えてしまいます。特に慣れている外科医でも大半のひとは手が震えます。それが世良先生はまったく震えず、一発で針を掴みます。これは練習の成果ではなく天性のものです(もちろん練習して震えなくすることは可能です)。本番前の練習の場面でも思いました。竹内さんは全く震えずに針を持ちかえ縫合することができるのです。別にリップサービスではなくこれは本当にすごいことです。周りのスタッフさんたちも挑戦しましたが、みんな震えてしまう。震えてしまうと針の持ち替えが遅くなり、時間がどんどんと経ってしまい、患者さんに非常に負担がかかります。あの場面を見ただけで、世良先生は外科医として非常に優秀で才能があることがわかります。
3. 心室内に人工弁が脱落しました!
関川先生がスナイプ手術を行い左手で弁をリリース(留置)してしまい、通常の弁の位置ではなく左心室に弁が落っこちてしまう(脱落)事態となりました。この時透視(レントゲン)画像を見て真っ先にその異変に気付いたのが世良先生。「心室内に人工弁が脱落しました!」普通の研修医なら何が起こったのか絶対にわからないはずです、なかなか即座にその状況を説明できる研修医はいません。スナイプの合併症に対してかなり勉強している証拠です。
4. 人工心肺の確立が素早くできている。
心臓外科医にとって人工心肺という心臓と肺の代わりをする器械を取り付ける(確立する)ことは基本中の基本手技なのですが、なかなかすぐにできるようなものではありません。高階先生が人工弁を回収デバイスで回収するときに左室心筋に引っ掛け左室から出血してしまいました(左室破裂)。「人工心肺を開始する」と指示して急いで人工心肺を確立します。人工心肺は送血管と脱血管という管(ボールペンくらいの太さの管)をそれぞれ動脈と静脈に入れて脱血管から静脈血を脱血し、人工肺で酸素加(酸素を加える)し、ポンプで送血管から動脈に血液を送ります。それにより酸素加された血液(酸素を含んだ血液)が全身に回るのです。心臓の手術で心臓を止めないといけないときや、心臓や肺の機能が弱ったときに使用することで、生命を維持することができます。この場合、左心室から出血して、心臓が十分に血液を全身に送れない手助けに人工心肺を取り付けたのです。この時の世良先生の動きは実に無駄がなく、柿谷先生が「世良、静脈からコネクト!」と指示し、世良先生は脱血管を人工心肺とコネクト(つなげる)します。研修医ならほとんど手も足も出ないところですが、全く物おじせずに手技を続けています。なかなか人工心肺をスムーズに取り付けることができる研修医はいません。おそらく全国で一番できる研修医であると思われます。
ちなみにこの前に器械出しの猫田さんが「人工心肺いつでも回せるようにしておいて」とME(medical engineer:臨床工学技士)に指示しますが、この指示を出せる看護師はほとんどいないというか医者以上です。1話における「美和ちゃん、クーリー拘用意しておいて」に続く神がかった指示です。
5.心尖部の縫合ができる
これはかなり難しい手技です。また後述しますが、心臓は4つの部屋がありその壁は筋肉でできています。左心室は特に分厚い筋肉でできているのですが、その筋肉は非常に繊細で脆いのです。その筋肉を縫合するということは非常に難しく、すこしでも手元が狂うと容易に筋肉が裂けていき大出血をします。この場面実際心臓模型を竹内さんは縫合しているわけですが、先ほども言ったように全く遜色なく縫合している、本当に外科医になっても通用すると思います。
世良先生のすごいところを列挙してみたらこんなに長くなってしまいました。次回は僧帽弁手術後左室破裂です。

PROFILE

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イムス東京葛飾総合病院 
心臓血管外科
医長 山岸俊介
日本外科学会外科専門医
日本心臓血管外科学会専門医
2006年慶應義塾大学医学部卒業。
仙台厚生病院、埼玉医大国際医療センター、イムス葛飾ハートセンターを経て、現在イムス東京葛飾総合病院心臓血管外科医長。
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