寺田的世陸別視点

第20回8月30日(木)

陸上競技最終日、男子4×100mリレーは大会記録の37秒99更新が目標
男子4×400mリレーはスピードランナー投入でV候補カタールに対抗

4×100mリレー予選は日本が大きく先着

陸上競技最終日は男子両リレーが金メダルに挑む。
4×100mリレー(日本時間21:10スタート)は日本がどんな勝ち方ができるか、4×400mリレー(22:40スタート)は強敵カタールに対しどんな戦いができるか、が焦点になる。

29日に行われた4×100mリレーの予選は、日本と中国が同じ1組で出走。
1走から山縣亮太(セイコー)、多田修平(関学大)、桐生祥秀(日本生命)、ケンブリッジ飛鳥(Nike)の日本は38秒20で1位。予選としては十分に合格点の走りを見せた。
1走の山縣は銀メダルのリオ五輪と同じ走順。100mの激走(10秒00で銅メダル)から中2日でリレーに臨んだ。「昨日の段階で疲れが少し残っていたので、今日は無理をしないで走りました」と、全開ではなかった。
多田は銅メダルの昨年ロンドン世界陸上では1走だったが、今大会では2走に起用された。「緊張しましたが、走った後はホッとしました。この大会期間に入って調子が上がっています」
桐生はリオ五輪、ロンドン世界陸上も3走で連続メダル獲得に貢献した。今季は日本選手権100mで3位と敗れ、アジア大会はリレーだけの出場。「今回はリレーだけですが、走りは良かったと思います」。やっと回ってきた出番を満喫しているようだった。
4走のケンブリッジは、100mではまさかの準決勝落ち。「個人種目よりも良い走りを、という気持ちで走りました。感覚的には100m準決勝よりも良かったと思います」

30日の決勝は「バトンを含めて改善の余地がある」(山縣)、「もう一段階、ギアを上げていきたい」(多田)とレベルを上げた走りをする。桐生は「大会記録を出して金メダルを目指します」と、具体的なタイムの目標も掲げた。
大会記録は37秒99。4年前の仁川大会で中国が出したアジア初の37秒台だ。翌2015年の北京世界陸上で中国が銀メダルと37秒92のアジア新。2016年のリオ五輪では日本が銀メダルと37秒60のアジア新。そして昨年のロンドン世界陸上の日本の銅メダルと、日中両国が五輪&世界陸上で躍進するきっかけとなった記録である。

中国は仁川大会以降2走を務めてきた謝震業が、故障で今大会を欠場している。元から今大会100m金メダリストの蘇炳添と謝に続く3番手選手は、タイム差が大きかった。さらに謝を欠くとなると、戦力は大きく落ちる。予選は38秒88で日本とは8m前後の大差がついた。
それに対して日本は、リオ五輪、ロンドン世界陸上と2走を務めた飯塚翔太(ミズノ)を4×400mリレーに回しても、戦力が落ちない。予選のタイムからに0.21秒の更新は十分可能。アジアの4×100mリレーが、新たな段階に入るきっかとなるかもしれない。

男子4×400mリレーは走順もカギに

ライバルの中国が戦力ダウンしている4×100mリレーとは違い、男子4×400mリレーはカタールが巨大な壁となって立ちはだかる。
29日の予選に日本は、木村淳(大阪ガス)、川元奨(スズキ浜松AC)、安部孝駿(デサントTC)、ウォルシュ・ジュリアン(東洋大)の走順で臨み、3分06秒11で1位通過。同じ組のインドとイラク、2組目のカタール、バーレーン、スリランカの計6チームが3分6秒台だった。どのチームも通過が確定して最後は流している。正確な力は予選のタイムではわかりにくい。

だが個人種目のタイムは、カタールが圧倒的に良い。予選1走のA・サンバは400m障害で46秒98の世界歴代2位の選手で、400mでも44秒62を持つ。2走のM・アッバスは45秒15、3走のM・モハメッドは少し力が落ちて47秒09、4走のA・ハッサンは44秒07。
走力が一枚上の相手で、普通で考えたら勝ち目はない。
日本は今大会200m金メダルの小池祐貴(ANA)と、同6位の飯塚、200mのスピードのある選手を投入する。45秒を切るラップが期待できる2人だ。

走順もレース展開に大きく影響する。
400m日本選手権優勝者のウォルシュを、純粋に400mの走力が必要になる1走に起用することも十分あり得る。
2走は前半、かなりのスピードが求められる。小池か飯塚のどちらかが起用されるだろう。
予選では400m障害が専門の安部が、45秒94の好ラップで回った。決勝の3走か4走に起用される可能性も出てきた。
短距離陣最年長の木村は中大で同学年だった飯塚と、卒業後初めて4×400mリレーチームを組む。今は個人的な思いよりも、チームJAPANの勝利を最優先する。
「打倒カタールと日本記録更新に向けて、個人的な思いもありますが、チームJAPANとしてまとまることが最優先です。勝機は、飯塚と小池のスピードランナー2人を投入することしかありません。選手として走るならチームを引っ張りますし、結果的に僕が外れることになったら全力でサポートします。アジア大会最後の山を、日本チーム全員で乗り越えたい。打倒カタールはやってみないとわかりませんが、僕は、望みはあると思っています」
チームJAPANの結束力が大きな力を生み、サプライズを起こす可能性は絶対にある。

寺田 辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。
一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。
選手、指導者たちからの信頼も厚い。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。

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