寺田的世陸別視点

第15回8月27日(月)

陸上3日目は安部、戸邊、新井の同学年トリオが世界レベルの強豪に挑戦
男子400m障害には世界歴代2位のサンバが登場

陸上競技3日目は男女の中距離種目の予選・準決勝に日本選手が登場し始める。
夕方以降は決勝種目が次々に行われ、絶対的な本命といえる日本選手はいないが、今季アジアリストで2〜4番手くらいの選手が多く登場する。
金メダルを1つでも取ることができれば、日本チームは勢いづく。

陸上競技3日目で最も金メダルに近いのは、男子走高跳(日本時間21:00開始)の戸邊だろう。
7月に2m32の日本歴代2位、国外日本人最高を跳んでいる。昨年の世界陸上金メダリストのM・E・バルシム(カタール)はケガのため欠場。世界陸上銅メダリストのM・E・ガザル(シリア)が実績ではナンバーワンだが、今季は2m33がシーズンベスト。戸邊はガザルに今季2連敗だが、2回とも同記録と互角の勝負を演じている。
25日の予選は2m10、2m15とも1回目にクリアして決勝進出を決めた。
「調子が良くて、楽に通過できたので良かったです。ダイヤモンドリーグのバーミンガム大会(8月18日。2m24で4位)は助走のスピード感やリズムがしっくり行かなかったのですが、そこを修正しました」
2m30台のシーズンベストは2m33のガザル、2m32の戸邊と王宇(中国)の3人。ダイヤモンドリーグでも上位に入っているこの3人が、優勝争いを演じると思われる。2m30は2人以上が跳ぶと予想でき、2m30の次の高さを1回目でクリアした選手が、優勝に近づくのではないか。
近年の競技場は、トラック種目の記録が出やすい硬い素材が使われているが、今大会会場のゲロラ・ブン・カルノ・スタジアムは表面がチップ状の軟らかいタイプ。だが走高跳の場合、短距離や走幅跳の助走よりも接地時間が長く、地面からの反発を「待てる」ので、多少軟らかい方が記録は出る、と言う選手もいる。
26日の男子100mのように短距離でも記録は出るが、走高跳は記録への期待がより大きい。戸邊には2m33の日本記録更新も可能性がある。

(日本時間21:00頃予定からの)男子400m障害には、今大会の目玉選手の1人であるA・サンバ(カタール)が登場する。
今季46秒98のアジア新、世界歴代2位をマークした選手だ。46秒台は26年ぶりの快挙だった。26日の準決勝はかなり力を抜いた走りをしたサンバだが、49秒34で余裕のトップ通過。決勝ではアジア大会初の47秒台が期待できる。
準決勝で2番目のタイムを出したのは、サンバと同じ3組のD・アッヤサミー(インド)で49秒55。日本の安部孝駿(デサントTC)は1組で49秒71。準決勝全体で3番目だったが、前半はかなりのスピードを出していた。
障害種目はハードルに脚をぶつけることもあるので、アクシデントが起きる確率は他の種目よりも高い。サンバに油断があり、安部が先行された時に焦りが生まれるようなことがあれば、安部にも金メダルのチャンスが出てくる。

男子3000m障害(21:30頃予定)には塩尻和也(順大)と山口浩勢(愛三工業)が出場。ダブル・メダルも期待できる種目だ。
塩尻は日本選手権優勝時に、8分29秒14の今季アジア2位記録をマーク。山口も7月のヨーロッパ遠征で8分30秒98と自己新。その3日後には5000mでも自己新と絶好調だ。
だが、今季アジア最高は8分22秒00のJ・コエチ(バーレーン)で、自己記録は2016年に出した8分09秒62。普通の調子で来られたら勝つのは難しいが、コエチに油断があれば日本勢にもチャンスはある。
国内では独走に持ち込むタイプの塩尻が、序盤からコエチが予想できないハイペースで走れば驚かせることができる。また、スローな展開でラスト勝負に持ち込めば、ラストのスピードが武器である山口が勝負を挑むことができる。

そして男子やり投(20:45頃予定開始)には前回銀メダルの新井涼平(スズキ浜松AC)が登場する。
昨年のケガによる低迷から復調したが、現時点では80m83がシーズンベストで苦戦が予想されている。
この種目ではN・チョプラ(インド)が87m43の今季アジア最高をマーク。85m以上を安定して投げている選手で、ダイヤモンドリーグでも上位に食い込むなど、2年前のU20世界陸上チャンピオンが成長を見せている。
ただ、昨年91m36のアジア人初90m台を投げた鄭兆村(チャイニーズタイペイ)は今季、84m60がシーズンベスト。85m以上は2試合でしか投げていないので、付け入る隙はあるタイプだ。
新井の自己記録は2014年に投げた86m83の日本歴代2位。翌年の北京世界陸上、16年のリオ五輪と大舞台でも84m台を投げて決勝に進出した。実績では上記2人にも引けをとらない。
最近の練習では83〜84mの距離も出ているという新井。6回行われる試技の1回目に、83m以上を投げれば、85m以上も期待できる。金メダルの可能性もゼロではない。

寺田 辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。
一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。
選手、指導者たちからの信頼も厚い。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。

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