寺田的世陸別視点

第12回8月26日(日)

陸上2日目の山縣vs.蘇のアジア最速決戦にオグノデ弟も参戦か
十種競技・右代は“前回超え”と金メダルに意欲

陸上競技2日目の午後は男子100mの準決勝と決勝が行われ、アジア最速スプリンターが決定する。
男子十種競技は後半の5種目が行われ、右代啓祐(国士舘クラブ)が大会2連覇に挑戦。
男子走幅跳は25日に予選が行われ、橋岡優輝(日大)がただ1人8mを超える8m03(±0)をジャンプ。全体トップで26日の決勝に進んだ。

男子100mは蘇炳添(中国)と山縣亮太(セイコー)の対決が予想されていたが、T・オグノデ(カタール)も加わった三つ巴の争いになるかもしれない。そこに準決勝の結果次第では、ケンブリッジ飛鳥(Nike)や楊俊瀚(チャイニーズタイペイ)も加わってくる。
驚かされたのは予選1組だ。
T・オグノデがスタートから山縣に先行し、10秒16(-0.1)で1位通過した。山縣は0.03秒差の2位通過。オグノデは、蘇とともにアジア記録を持つF・オグノデ(カタール)の弟だった。
兄は前回の金メダリストで名が知られた存在だったが、弟はそこまで有名ではなかった。2016年に出した10秒18が自己記録。公認許容範囲ぎりぎりの追い風2.0mだったこともあり、そこまで高く評価されていなかった。
それが今回は向かい風0.1mのなかでの自己新で、五輪で2大会連続準決勝進出の山縣に先着した。アジアの短距離界ではニュースだった。

しかし敗れた山縣に、ショックの様子はない。
予選もほぼ全力で臨んだが、そのなかで課題を見つけて修正できるのが山縣亮太という選手の特徴である。
「思った以上にスタートでオグノデ選手の存在を感じてしまいました。ただ、中盤以降はひどく硬くなった感覚はありません。スタートからもっとレースを作っていけば、明日は内容の良い走りができると思う」
山縣が自身の感覚と照らし合わせて、こう修正できると言う時は、かなりの確率で実現する。
競技場のサーフェスが、チップで軟らかいため記録が出にくい、という選手たちの感想だが、しっかりと地面を押せる選手は反発をもらいやすい、という声も聞かれた。記録面も含めて山縣の準決勝、決勝は期待できそうだ。

2組では昨年のユニバーシアード優勝者、楊が10秒13(+0.6)で1位通過。
10秒23のケンブリッジに0.10秒も先着した。楊は自己記録を0.07秒も更新。10秒0台まで縮めてきたら優勝争いに絡んでくる。
3組は地元のL・M・ゾーリ(インドネシア)が10秒27(±0)で1位。スタンドを沸かせた。7月のU20世界陸上優勝者で、地元の期待は大きい。
4組は蘇が10秒27(-0.6)で1位。抑えて走った印象もある。
そして5組はA・A・モハメド(サウジアラビア)が10秒15(+0.7)で1位通過。今年10秒03を出している実力者だ。

準決勝は3組行われる。
予選各組の1位が2人入る組も当然、2組はあることになる。
山縣や蘇、ケンブリッジという実績のある選手が予選よりも調子を上げてくる可能性が高いが、予選を1位通過したオグノデ弟、楊、モハメドらが勢いに乗って準決勝1位通過を果たす可能性もある。そうなったら優勝争いの構図にも変化が生じる。
アジア最速決戦は、日本時間の23時25分ごろ(予定)に号砲が鳴る。

十種競技は25日に前半5種目が行われ、21歳のS・シンコーン(タイ)が4239点でトップに立った。
中村明彦(スズキ浜松AC)が3983点で3位、右代は3946点の4位で折り返した。
シンコーンの初日合計得点は、7732点の自己記録を出した昨年のアジア選手権とほぼ同じ。対する右代は8000点前後のペース。
競技歴の浅いシンコーンが後半の強化に成功していれば別だが、普通にやれば右代が逆転できる。逆転する種目は右代が得意とする後半⒋種目目のやり投か、シンコーンが苦手とする最終種目の1500mだろうか。

右代は100mが11秒39と低調なタムでサポーターを心配させたが、2種目目の走幅跳で「走れていないわけではなく、体の使い方がズレていた」と修正できた。初日最後の400mでは50秒29と、「長丁場で海外のレースなりによかった」と言う。
「4年前のアジア大会優勝時に、僕が出した8088点は超えたい」
V2に向け、右代の目標を明確だ。

100mと十種競技、話題の大きい2種目以外では、男子走幅跳が期待できそう。25日の予選を橋岡優輝(日大)が8m03(±0)でトップ通過を果たしたのだ。
中国の王嘉男らも決勝では本気を出してくるが、橋岡も全力ではなかった。
「ガツガツに行ったのではなく、軽い感じで8mを跳ぶことができました。体のコンディショニングがよかったからだと思います。今までの8mでは、なかった感覚です」
父の利行さんが棒高跳で、母の直美さんが100m障害で1986年のソウル・アジア大会に出場した。そして2人とも日本記録保持者だった。
「両親は、自分の力を出して楽しんで来れば、と言って送り出してくれました。母が銅メダルを取っているので、自分の目標は銀メダルか金メダルしかありません。どうせなら金メダルが欲しい。日本記録に手がかかれば、金メダルも可能だと思っています」
走幅跳ががぜん、注目種目になった。

寺田 辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。
一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。
選手、指導者たちからの信頼も厚い。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。

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