寺田的世陸別視点

第11回8月25日(土)

女子マラソンはロンドン世界陸上金メダリストのチェリモが優勝候補
日本2選手はメダルの色を少しでも良くするために“思い切った走り”を

陸上競技2日目(8月26日)の朝6時(日本時間8時)に女子マラソンがスタートする。
昨年のロンドン世界陸上金メダルのR・チェリモ(バーレーン)が絶好調なら、その強さは1枚上だろう。だが今季はロンドン・マラソンで6位。そこまでの強さが感じられない。
チェリモが不調なら日本の野上恵子(十八銀行)と田中華絵(資生堂)、今年2時間25分41秒の韓国記録をマークしたキム・ドヨン(韓国)、ともに2時間27分台を持つチョ・ウノクとキム・ヒソンの北朝鮮コンビら、多くの選手にチャンスが生じる。

チェリモの調子がレース展開を左右しそうだ。
昨年の世界陸上は1位から4位までが10秒差の激戦で、2位のE・キプラガト(ケニア)に7秒差で快勝した。
今回もラスト勝負になったらチェリモが優位に立つ。
だからといって不用意に前半から飛び出したら、最後までもたないケースが多い。力のある選手が集団にいたら、他の選手はなかなか動けないのがマラソンである。
下り坂コースなので公認記録にはならないが、チェリモは昨年のボストン・マラソンでは2時間22分51秒で走っている。トラックはほとんど出ていないが、昨年10000mに31分37秒81を出している。
チェリモが好調だったら、ジャカルタでも絶対的な本命だ。

対抗に挙げるとすれば同じバーレーンのデシ・モニコンだろう。
今年のドバイ・マラソンで8位だったが、2時間24分05秒のタイムはチェリモのベスト記録を9秒上回る。10000mの記録も31分19秒00で、これもチェリモを28秒上回る。
しかしチェリモは勝負強さが特徴の選手。両種目ともこの秒差はそれほど意味はない。どちらがアジア大会へピークを合わせられたか、がより大きな要素となり、それも同じくらいであればチェリモの勝負強さが勝敗を決するか。

力的には上と思われるバーレーン勢も、世界的に見ればすごいタイムを持っているわけではない。
しかもインドネシアの暑さの中だ。ハイペースで飛ばすとは思えない。
野上はレース3日前の取材で、レース展開について次のように話していた。
「ペースはどうなるかわかりませんが、まずは先頭に着きたい。30kmまでは様子を見て、そこから、どこかで仕掛けたい」
日本陸連の河野匡ディレクターは「相手のランクが違う」と、バーレーン勢との力の差を認めたうえで、「思い切ったことをやらないと、メダルの色は良くならない」と話した。

日本勢には2つの“思い切り”の選択肢がある。
1つは25日の男子のように超スローペースになったときに、自ら仕掛けること。
前述のように、ラスト勝負になったらチェリモに一日の長がある。小刻みな仕掛け合いも、日本勢よりアフリカ勢が得意とするパターンだ。日本選手は一定ペースで押して行く方が、力を発揮できる。
もう1つの“思い切り”は、レースが動いた時に早めに集団から離れる方法だ。
先頭集団でぎりぎりまで粘ったり、ペースの上げ下げに力を使って対応したりするよりも、いったん下がってマイペースで追い上げる。実際に野上は昨年のアジア選手権で2位になったときも、今年の名古屋ウィメンズマラソンで5位(日本人3位)となったときも、10km前後で先頭集団から離れて終盤で順位を上げている。

どちらの戦術も中途半端な実行の仕方では、中途半端な結果に終わる。
マラソンは女子の方が“思い切った走り”が必要だ。

寺田 辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。
一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。
選手、指導者たちからの信頼も厚い。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。

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