寺田的世陸別視点

第10回8月25日(土)

右代の2連勝がかかる十種競技の初日の展開は?
注目の男子100m予選で山縣はオグノデ弟と同組に

陸上競技初日午後の注目は、右代啓祐(国士舘クラブ)が2連勝に挑戦する十種競技の前半5種目と、アジア最速決戦となる男子100mの予選に注目したい。
決勝種目は女子のハンマー投と10000m、男子砲丸投が行われる。

男子100m予選は1組(日本時間21:00)に山縣亮太(セイコー)、2組にケンブリッジ飛鳥(Nike)が出場する。
予選は5組行われて各組の上位4人と全体を通じて5位以下の記録上位4人が準決勝に進出する。2人とも流しても通過できるが、山縣は決勝の前のラウンドでもきっちり動きを作ってくる。そこで課題を見つけさらに、決勝で動きを洗練させる。
1組には昨年10秒07の韓国記録をマークした金国栄、9秒91のアジア記録を持つF・オグノデ(カタール)の弟のT・オグノデ(カタール)がエントリーした。オグノデ弟は10秒18の自己記録を伸ばしてくる可能性があるが、実績では山縣が2人を上回る。しっかりと1着で通過して、準決勝に備えたい。
準決勝は3組行われる。
前回の仁川大会の山縣は準決勝で、前アジア記録保持者のS・フランシス(カタール)に勝とうとして力んでしまい、内転筋を痛めた。決勝はケガが気になって納得できる走りができず、6位と大敗した。

大会前日の24日に取材に応じた山縣は「4年前のことも思い出しますが、どちらかというと1年1年しっかりとやってきて、新しいステージで走る気持ちが強い」とコメントした。⒋年前のリベンジではなく、今やるべきことに集中したい、という意味である。
オグノデとともに9秒91のアジア記録を持つ蘇炳添(中国)が、山縣の最大のライバルになる。できれば蘇とは決勝まで当たらず、準決勝は自身の走りに集中したい(決勝も自身の走りに集中するのは同じだが)。準決勝で同じ組になる可能性もあるが、予選をトップ通過すれば別の組になる可能性が大きくなる。
風が無風に近ければ予選を10秒10前後、翌日の準決勝を10秒0台中盤で通過し、決勝で9秒台を出すのがベストパターンだ。

トラック種目では女子100m障害予選に青木益未(十八銀行)と紫村仁美(東邦銀行)が出場する。
青木は1組で、紫村は3組で、自己記録&シーズンベストともトップ。問題なく通過するだろう。
日本選手が出場する決勝種目は女子の10000mとハンマー投。
10000mの堀優花(パナソニック)は自己記録では出場選手中3番目、シーズンベストでは2番目である。国内でもラスト勝負では通用しないので、得意の中盤で積極的に引き離しにかかるだろう。相手が怯めば勝機も見出せる。

ハンマー投は勝山眸美(オリコ)と渡邊茜(丸和運輸機関)の2人が出場する。
中国勢2人が75m以上の自己記録を持つので金銀は難しい。2人のどちらが銅メダルを取るか。
できれば日本記録の67m77を、アジア大会という大舞台で更新したい。

十種競技は前半の5種目が行われる。
午前中に100m・走幅跳・砲丸投、午後に走高跳と400mである。
初日を得意とするのが前回銅メダルの中村明彦(スズキ浜松AC)で、スピード型の中村は100mと走幅跳、400mの3種目で右代をリードする。パワー型の右代だが、厳密には跳躍にも強いパワー型。
高校時代の専門種目は走高跳とやり投だった。

毎回2人の走高跳は互角の勝負を繰り広げる。タイプの違う2人が、同レベルの記録で競り合うシーンは観戦時の醍醐味の1つ。片方が跳べば、もう片方も跳び返す。「十種競技ならではの相乗効果」だと2人は口を揃える。
前回の仁川大会は2人の争いにL・アンドレエフ(ウズベキスタン)が割って入って銀メダルを獲得した。今回日本のメダリストコンビに挑戦してくるのはタイの新鋭、21歳のS・シンコーンだ。
昨年のアジア選手権に7732点の自己新で優勝した選手。
ロンドン世界陸上は途中棄権に終わっているが、年齢と、ムエタイから転向して間もないことを考えると、自己記録を一気に伸ばしてくる可能性はある。
シンコーンは中村と同じスピード型で1日目に強い。
7732点のときの初日は4256点で、中村の好調時と変わらない。特に走幅跳が強く、7m79を跳んでいる。

右代は元々、ライバルの得点を気にせず競技を進める選手だが、今大会は中村とシンコーンに前半をリードされることを覚悟して初日を競技する。
その点を松田克彦コーチは、右代の気持ちを次のように代弁した。
「最低ラインを絶対に崩さないことです。(不得意の)前半も取りこぼしをしないで、最低ラインの得点は必ず取り続ける。そうすればリードされても2日目に余裕をもって臨むことができ、逆転ができる」
仮にシンコーンが弱点の2日目の強化に成功し、8000点まで自己記録を伸ばしてきたとしても、右代が初日を3900点で終えられれば、2日目で8000点を大きく上回る。
逆転できる目安としては、300点差くらいを最大ラインとして観戦するといいだろう。

寺田 辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。
一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。
選手、指導者たちからの信頼も厚い。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。

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