注目8競技

寺田的 陸上別視点

10月1日(水) 【第24回】第4日(9/30) 男女マラソン勢が会見。20〜30kmの連続するアップダウン対策は?

勝負強さのある木崎と川内
初代表の早川と松村の勝負所がどこになるか、にも注目を

●4選手のアップダウンへの考え方は?
女子マラソンを2日後(10月2日)、男子マラソンを3日後(10月3日)に控えた30日、日本代表の木崎良子(ダイハツ)、早川英里(TOTO)、松村康平(三菱重工長崎)、川内優輝(埼玉県庁)の男女4選手が記者会見を行った。

今大会のコースは仁川南部のソンドと命名された松島国際都市のセントラルパークをスタートし、北部のアジア大会メインスタジアムにフィニッシュする。周回などを設定して片道コース(記録非公認)にならないようにしているが、「ワンウェイなので風向きによって展開を変えないといけない」(川内)と、選手は片道コースに近い認識でいる。
全体的にはフラットなコースだが、20km付近の市の中心部から、スタジアムの手前の30kmまでは細かなアップダウンが連続している(30kmから西側に折れる)。会見で各選手が、連続するアップダウンをどう考えているかが明かされた。

松村「全体的には走りやすいコースという印象ですが、20kmから30kmでアップダウンが結構続きます。距離的にも、コースのタフさ的にも勝負のポイントになるのかな、と思いました」
川内「前半はずっとフラットですが、中盤でかなりアップダウンがあります。それに加えて最後でまた、競技場に向かって上っていきます。そこまで競っていることはあまりないと思いますが、もしも40kmまで競っていたら、坂がキーになる」
木崎「私の粘り所である20kmから30kmでアップダウンがあるので、そこでしっかりと粘りたい。いかに力を残して、20kmから30kmを走るかがポイントになります」
早川「道幅が広く見通しが良いので、もしも先頭集団から離れたとしても、前をしっかりと見て走って行けるコース。20kmから30kmでアップダウンが続くので、少し我慢のしどころかな、と思っています」

●勝負スタイルが明確な木崎と川内
木崎の勝ちパターンは“ラスト勝負”である(コラム第11回参照)。勝利がより確実になるのは、残りの距離が短くなってからと思われた。
だが、会見で木崎が次のようにコメントした。
「練習の30km走、40km走ではラスト10km、5kmから上げるメニューもやってきました。いつもラスト1kmを意識してきましたが、今回はロングスパートも考えています」
それだけ練習に手応えを感じている。ダイハツの林清司監督によれば、7月のスイス・サンモリッツ合宿では苦しんだが、8月の米国アルバカーキ合宿、9月の北海道士別合宿と徐々に状態が良くなってきている。
「スパートは“行けると思ったところ”になりますが、(そのためにも)20kmから30kmのアップダウンを、周りの人に合わせて楽に走りたい」
目に見えない部分ではあるが、集団や他の選手のペースに合わせても、自分の走りやすいペースにすることができる。それも木崎の能力の1つなのだ。

川内はバトオチル(モンゴル)に対しては、防府マラソンの上りで競り負けた経験があり(コラム第14回参照)、今回も上りで勝負に行くとは考えにくい。得意とするのは下りである(箱根駅伝でも山下りの6区に2回出走)。2時間6分台の記録を持つデチャサ(バーレーン)らアフリカ出身の選手たちが、圧倒的な走力を持っていたら何をやっても勝てないが、先行型のバトオチルとも共闘する形で、上り下りでアフリカ出身選手を引き離せたらベストだろう。

どの地点からとは決まっていないが、川内の勝ちパターンを言葉にするなら“相手も苦しいところでさらに行く”ことだろう。ロンドン五輪入賞の中本健太郎(安川電機)を、デッドヒートのすえ引き離した2013年の別大マラソンがそうだったように、相手が根負けするまで何度でも仕掛ける。

コラム第14回には「最後の7.195kmはなんとかなる」というコメントがある。35kmまでペースメーカーが適度なペースで引っ張ってくれれば、という前提の話だが、その距離ならどんなに苦しくてもなんとか走れる、という潜在意識の表れかもしれない。
また、残り2.195kmのタイムも、たとえ優勝はできていなくても、参加選手中トップだったことも何度かある。最後の上り坂での勝負は避けたいようだが、トラック勝負にもつれ込んでも川内は期待できる選手である。

●苦手だった上りを克服した早川
木崎&川内がマラソンで複数回優勝しているのに対し、初代表の早川と松村は、(エリート)マラソンでの優勝経験がない。このアジア大会で結果を出せば、勝ちパターンを確立したり、レースの幅を広げることになる。今後のマラソン人生に自信を持つ、という意味でも重要な大会だ。

“上り”がカギになるかもしれないのが早川だ。2011年から元トライアスロン日本代表の経歴を持つ山本光宏コーチの指導を受け始めたが、山本コーチはロードの練習でも山間の道をよく使用する。すでに50歳に近かった山本コーチが上り坂を一緒に走っていると、「早川が知らないうちにいなくなっていた」ことが何度もあった。

上り坂だけでなく、長年同じ筋肉を使い続けてきたことで、使えなくなっている筋肉が多いと山本コーチは判断。接地の仕方や動きをどう変えたらいいのか、どこの筋肉をつければいいのかを早川と2人で考えた。
「年々、上りが苦にならなくなってきましたね。リズムに乗れないときもまだありますが、以前みたいになんできついのかわからない、ということはなくなりました。(山本コーチが取り入れた)自転車のトレーニングで上りの走りを支える腰回りの筋肉がつき、リズムもとれるようになったのかもしれません」
上りでスパートすることはないかもしれないが、20kmから30kmのアップダウンをリズム良く走りきれば、30km以降の余力が違ってくる。木崎に次いで日本人2位となった3月の名古屋ウィメンズのように、残り10kmを切ってから積極的に仕掛ける可能性がある。

●初のペースメーカーなしのマラソンとなる松村
松村のマラソン歴は3回。初マラソンの2012年別大(2時間11分18秒=4位)から翌13年のびわ湖(2時間10分12秒=7位)、そして日本人トップとなった2月の東京マラソン(2時間08分09秒=8位)と、一度も失敗することなく確実にステップアップしてきた。
レース展開的には3レースとも、設定されたペースで進め、最後は粘れるだけ粘る、というマラソンを走ってきた。それに対してアジア大会はペースメーカー不在で、最初から最後まで、誰が、どんな動きを見せるかわからない。川内やバトオチルが激しい競り合いを経験しているのに対し、松村はマラソンではそういった経験がない。

その点を松村陣営がどう考えているのか。三菱重工長崎の黒木純監督が次のように話していた。
「レースの流れをしっかりと見極めることが大事です。バーレーン選手を見ながら、川内君とバトオチル選手の動きに合わせていくことになります。相手がバテたときに一気に行くことをイメージしています」
東京マラソンでは2時間4〜6分台の選手が大挙出場したため順位は8位だったが、35km以降は粘りというよりも、積極的な走りで日本人トップを確保し、外国人選手も何人か抜き去った。
代表ということ意識しすぎると良くないという判断で、トレーニングの組み方は変更しなかった。ただ、最後の仕上げのタイム設定は「バーレーンとかを意識して少しペースを上げた」と言う。
初代表の早川と松村が“自分のパターン”を仁川でつかめば、マラソンの複数メダル獲得も可能になる。

メダルランキング

順位 国・地域 合計
1 中国 151 108 83 342
2 韓国 79 71 84 234
3 日本 47 76 77 200
4 カザフスタン 28 23 33 84
5 イラン 21 18 18 57

※10月4日23時10分現在