週刊Scoop[2月23日号]

不定期連載 通りかかった気になるお店 甘く切ない思い出を巻くロールケーキ「ニシキヤ」はらぺこフードライター・小泉真美がきょうも行く!

(写真) 2月のお菓子といえばバレンタインのチョコレートだ。しかし右も左もチョコレートばかりで、あげる相手もいないワタクシ完全にスルーさせていただきました。とはいえ、女子としては甘いフンイキ、甘いお菓子というのは大好きなので本日はケーキを買いに行こう。 中板商店街に昭和の頃から店を構える洋菓子店「ニシキヤ」。2000年代以降のスィーツブームで新旧乱立のきらいのあった洋菓子業界だが、ここはワタクシのような昭和生まれには懐かしく、平成生まれにはむしろ新鮮に映る、愛おしい定番のラインナップが充実している。 中でもロールケーキは創業当時からレシピを変えず、値段もそのままで頑張っているという名物だ。近頃のケーキは見た目は豪華だがサイズが小さかったり(しかも高い)、カロリー控えめのものなどがあるが、あの生クリームの甘さには変えがたいものがあると思う。そもそも、カロリーを気にする人が「甘さ控えめなら大丈夫」とお菓子を食べることがどうなんだとワタクシは思う。

(写真) そんな昨今、ニシキヤの甘さはたまらない。子どもだったら大喜びだ。子どもの頃に愛した甘さは、酸いも甘いも知り尽くした大人の口には甘すぎる。地元商店街で暮らす棟方さんちも、ゆづるさんのご両親が健在だった頃からよく買いに来ていたという。誰にでも「思い出の味」はあって、フードライターとしてこれだけいろいろなものを食べてきたワタクシにも「大切な味」はある。五感は記憶と結びついていると思うので、それが何かは恥ずかしくてここでは言えないが、思い出の味は思い出の人と一緒に食べたいが、それは二度と叶わないかも知れない。でも生きているうちに素直になる、それはとても大切なこと。なんてカッコつけて書いているがクリスマスも誕生日もバレンタインも独りで過ごしたワタクシ、別れた男との思い出の味など二度と味わいたくないっての。こんなひねた大人に誰がした、責任転嫁で今日もゆく。地元で長年愛されてきた「ニシキヤ」のロールケーキくらい、素直な気持ちで食べてみよう。

CLOSE