ジャックされたバスの行き先もわからずSATも作戦をしぼりきれなかった中、乗客の一人であった古橋警部補の息子さん・史郎くんが機転を利かせて行き先を書いたメモを道路上に落としていってくれた。父親の同僚である神御蔵巡査からもらったという「ヒーロー」に励まされ、その恐怖に打ち勝ったというがまだ小学生、きっと恐ろしかっただろうに、母親に心配かけまいと気丈にふるまう姿は立派だった。
バスに乗り際に言った「警察官のお父さんなんか大キライ」という言葉を後悔していた史郎くんだが、自分だけの父親であってほしいという純粋な子どもの心から反発してしまったのは仕方のないことだろう。遊んで欲しいときに自分ではない誰かのために出かけていく父親を息子はどう見ていたのか。家と幼稚園、学校だけが自分の世界、まだまだ世間のことなどわかるべくもない年齢、それでも今回の事件で自分を、自分だけではないみんなを助けるべく命をかけてくれた父親の姿、それはあの時の背中の意味を知るには充分だったろう。
「自分も父親のような、たくさんの人の平和を守れる警察官になりたい」そう叫ぶように決意を語った史郎くん、父親の背中をもう一度見て、この先どんなことがあろうと大切なものを守っていこうとする大人に、そして警察官になってくれるかと思うと、古橋警部補だけではなく、胸が熱くなる思いがした。
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