週刊Scoop[2月23日号]

バスジャック犯・廣田秋人容疑者「唯一の思い出を壊したかった」 動機は親への反発

(写真) バスジャック犯・廣田秋人容疑者は警察無線の盗聴、操作妨害、爆弾の製造・所持、そして傷害容疑と罪状は相当なものになるが、動機は「父親への反発」だった。秋人容疑者の父親・廣田春樹氏は経済誌にインタビューが掲載されるなど経営者としては有能な人物ではあったが、家庭を顧みない典型的な仕事人間であったようだ。思春期の多感な時期に、唯一自分を見てくれていた母親を亡くし、優秀な姉はアメリカへ渡り、残された秋人容疑者はその父親と二人で暮らしながら孤独感を募らせ高校も中退してずっと引きこもり、会話もまるでなかったという。
我が子の未来の幸せを願わない親はいないだろうが、願いが期待へ、そして押し付けへと変化することもままあることだ。過度の期待は子どもにとってはプレッシャーにしかならず、医者であれば子どもも医者になって当たり前、自分の子どもなのだからこれが出来て当たり前、そういう押し付けは子どもをだめにしてしまう。子どもは子ども、別人格であるという認識をきちんと持って、コミュニケーションをしっかりと取ることが大切なのではないだろうか。

(写真)

80年代には親への反発として家庭内暴力が吹き荒れ社会現象となったが、ゆとり世代と言われるこの年代の子どもたちは目的を見つけられない無気力さが問題視されている。ニート、引きこもりと問題は根深く、秋人容疑者もそんな一人であった。唯一の幸せだった思い出を壊すことで、完全に家族から決別できるという思考は短絡的で幼いものであるし、無関係の人を巻き込んだその手段は卑劣だが「母親の元に行きたい」という叫びは、父親にも自分を見て欲しかったという声の現れであろう。夢を託すこともいいが、押し付けたり思い通りにならないからと突き放してはいけない。突き放された秋人容疑者は起爆装置を押してしまった。神御蔵巡査が残り少ない時間の中、爆弾を取り外しそれを蘇我巡査が撃ち抜いて空中爆破させたことにより無事確保できたが「あのときこう言っていれば、こんな事件は起こらなかったかもしれない」と後悔しても時間は元には戻らない。ならばこの先を家族としてどう向き合っていくか、それこそが重要である。現代の親子コミュニケーションの欠如を考えさせられた事件であった。

CLOSE