2019.3.24 OA
#75 菅野敬一
67歳 板金職人

板金職人の三代目。
航空機部品の構造体を応用して作る「エアロコンセプト」の鞄や小物が人気を集め、世界中にファンを持つ。

一番嬉しいのは、自分が欲しい物を作れるっていうことだろうね。
それが一番嬉しいことだね。

僕は不便が好きなの。

不便なものの中からは、僕はだよ、カッコ良さとか、潔さとか、優しさとか、思いやりとか、何かそういうのを感じるんだよ。

この鞄、薄っぺらい鞄なんだけどね。
こういう儀式があって、こういうふうに開けたいわけなの、手が綺麗でしょ。

あなたに会うためだけの、その用事だけのものをこの中に詰め込んで行ったら、
きっとカッコいいかなぁって。

じいさんの代から、下請けの板金工場。
で、俺の代になって会社潰しちゃったもんだからさ、何にもなくなっちゃった。
で、考えたのは「よし、死ぬまでに、自分の好きな物だけ作ってみようかなぁ」って。
「一回だけ自分を信じてやろうかな」と思った。

俺が考えた物にお金払ってくれる人が出てきたんだよ。
それ不思議だろ、凄く。

一番嬉しいのは、自分が欲しい物を作れるっていうことだろうね。
それが一番嬉しいことだね。