帰ってきた!弁護士豆知識99.9のQQ.Q

日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士- SEASON II 毎週日曜よる9時

帰ってきた!弁護士豆知識99.9のQQ.Q

リーガル・エンターテインメント『99.9-刑事専門弁護士- SEASONをより深く楽しんでいただくためのコーナー!弁護士や刑事事件に関するさまざまなQuestionを、ドラマの法律監修の國松崇さんに投げかけました。

Q5.民事で無罪??第4話で皆さんからいただいた質問にお答えします!

第5話をご覧になったみなさん、いかがでしたか?ついこの間始まったSEASONも、あっという間に折り返し地点まで来ましたね。ここにきて、遠藤裁判官(甲本雅裕さん)や川上裁判官(笑福亭鶴瓶さん)のキャラクターも明らかになってきました。裁判所まで加えた法曹界の人間模様については、なかなか他の作品でも見られないと思います。ドラマなのでもちろん全部がリアルというわけではありませんが、これからの展開もぜひ楽しみにしていてくださいね。
ところで、実は皆さんがブログやツイッターで毎回どんな感想を書いているのか、放送終了後、簡単にチェックしています(鋭い指摘などを見るとドキッとします笑)。第4話に関しては、「刑事裁判ではダメ、民事裁判で争う!」という展開について、もう少し詳しく知りたい、という声が多かったように思いました。そこで、せっかくこういう場をいただいているので、ここで簡単に解説してみたいと思います。
写真 まず、第4話で最初犯人だと目を付けられていたのは、自殺した岩村(ユリオカ超特Qさん)でしたね。もし岩村が生きていたと仮定すれば、彼が逮捕・起訴された上で、刑事裁判を受けることになります。そうすれば、いつもと同じように、斑目刑事事件ルームの面々が、岩村の無罪を導いたことでしょう。しかし、残念ながら岩村は死亡しています。日本では、被疑者が死亡した場合、その被疑者がどれだけ疑わしくても、制度上、刑事裁判が開かれることはありません。このことは逆に言えば、刑事裁判で岩村の無罪判決を勝ち取るチャンスも失われてしまった、ということを意味します。しかも、今回検察は証拠上岩村が犯人だと決めつけていましたので、ここから改めて徹底的な捜査を行い、彼らが真犯人を見つけてくれることは期待できそうにありません。
写真 そこで、深山達が思いついた方法が「民事裁判で実質的に無罪を勝ち取る」というやり方でした。殺人事件の遺族は、加害者(犯人)に対して慰謝料等の損害賠償請求ができます。また、請求の相手になる加害者が死亡している場合は、その支払義務は相続によって家族に引き継がれることになります(相続は、借金などの不利益な状態も引き継がれてしまうんです)。これは私人から私人に対するお金の請求ですから、刑 事ではなく、純粋に民事の領域です。深山達は、この関係を利用して、わざと被害者にあたる政一郎(迫田孝也さん)に、岩村の相続人である梢(有森也実さん)に慰謝料等を請求する民事裁判を提起させ、その裁判の中で、「損害を賠償する義務はない=岩村は犯人ではない」と主張し、まさにそのとおりの判決を勝ち取りました。さらに、真犯人が政一郎であることまで明らかにしたので、彼が後に有罪判決を受けることはほぼ確実です。これによって、間接的ではありますが、岩村の冤罪は完全に晴れたことになるわけです。裁判の仕組みをうまく利用した巧妙な駆け引きは、まさにお見事の一言でした!
すみません、第5話に関する豆知識もお伝えしようと思っていたのですが、残念ながらもうスペースが…。第5話についての豆知識はまた皆さんの感想などをコッソリ見ながら(笑)、改めて次回にでもお伝えできたらと思っています。お楽しみに!

Q4.刑事裁判と民事裁判、どう違うの?

寒い日が続いていますね。99.9の撮影スタジオの周辺は先日大雪でした…。そんな大変な状況の中で撮影された第4話ですが、お楽しみいただけたでしょうか?
さて、第4話は99.9では珍しく民事裁判が開かれましたね。日本には大きく分けて刑事裁判と民事裁判が存在します(SEASON弁護士豆知識Q2「刑事事件と民事事件の違いって?」参照)が、ここでは更に詳しくその違いを見てみましょう。
写真 まず、最も大きな違いは、「審理の対象」と「裁判の当事者」です。刑事裁判は「被告人に刑罰を科すかどうか」を決める裁判で、訴追者は国からその権限を唯一与えられた検察官が行います。簡単にいえば当事者構造は「検察(国家権力)vs被告人」。一方、民事裁判は、ある当事者の、もう一方の当事者に対する「特定の権利や請求が認められるかどうか」を決める裁判です。例えば、代金を払ったのに商品を渡さない人や会社に対してその引渡しを請求する、交通事故の被害者が加害者に対して治療費や慰謝料などを請求する、そういった権利があるかどうかを裁判によって判断するわけです。また、一個人でも会社でも、場合によっては国であっても、誰でも原告として訴えたり、または被告として訴えられたりすることがある、ということですね。
裁判の進行にも大きな違いがあります。刑事裁判では、検察官や弁護人の主張、事実関係や証拠の説明などは省略せず、被告人の在廷する公開の法廷で一つ一つ丁寧にこなしていきます。「審理はあくまで法廷で行う」という裁判の原理原則が重んじられているわけです。なので、一回の審理はそれなりに時間が掛かります。ところが、民事裁判は超が付くほど書面主義。予め言いたいことを記載した「準備書面」という書類を裁判所と相手方に送っておいて、肝心の法廷は「提出してある書面に書いた通りです。以上」と言い、「書いてあることを法廷で喋ったことにする」んです(これを「擬制陳述」といいます)。審理を早く進めるための方法で、別途証人尋問などがなければ、ものの数分でその日の審理が終了することもあります。4話にも「詳しくは準備書面に記載していますが…」という佐田のセリフがありましたが、これは実際の民事裁判に沿った格好になっています。
写真 最後に、これぞ法曹関係者以外知ってもしょうがないザ・豆知識を…。
よーくセリフを聞いていれば分かるのですが、刑事裁判と民事裁判では証拠に付けられる番号(呼び方)のルールが違うんです。刑事裁判では、検察側の証拠は、被告人に関する調書類(被告人の供述調書、前科前歴の照会結果、戸籍など)を「乙第〇号証」、それ以外の証拠(目撃調書、物証など)を「甲第〇号証」と呼びます(〇は数字)。また、弁護側の証拠は全て「弁第〇号証」と呼び、検察の証拠と区別しています。一方、民事では原告の証拠を「甲第〇号証」、被告の証拠は「乙第〇号証」という風に区別しています(マ、マニアック…笑)。ちなみに、番号の前の「第(だい)」は省略して話す人も多いのですが、深山はこの「第」を省略せずに言うことになっています。これは、松本潤さんが「深山だったら多分ここは、きっちり省略しないで言うんじゃないかな」と提案されたことがもとなんです。
役になり切りつつも、一方で客観的に深山というキャラクターを分析している松本さん、さすがです!

Q3.佐田先生の裏話と病院での尋問について

『99.9』をご覧の皆様、第3話はいかがでしたか?3話の法廷シーンに立ち会った際、見慣れないゴリゴリのロッカー風の男性が現場をウロウロしていて、随分気合の入ったエキストラさんだなあ、と思って近づいてみたら香川さんでした(笑)。
さて、もちろん皆さんお分かりかと思いますが、佐田は身元がバレないよう、傍聴席でカツラを被って変装していました。実はあのシーン、台本には一言「佐田が変装して傍聴席に」いう記述があるだけで、詳しい変装の描写はないんです。そこで、制作陣は当初帽子を被らせることを検討したそうです。では、なぜ本番はカツラに変更したか?実は裁判所の傍聴ルールを定めた「裁判所傍聴規則」に、「相当な衣服を着用しない者」には入廷を禁止することができる、と書かれており、その関係で、傍聴時に帽子を被っていると職員や裁判官から注意されることがあります。どうやら、法廷という厳粛な場所において着帽はふさわしくないといったことが理由のようです(なおこの規則には明記されていませんが、傍聴の際は録音録画禁止、ケータイ使用禁止、やや時代を感じるところではゼッケンやタスキなども禁止されています)。絶対に注意される、と断言はできませんが、質問してきたプロデューサーには念のため「もしかすると指摘を受けるかも知れませんね」と無責任に答えた私。その後本番までどうなったか聞かされずに撮影スタジオに立会いに行ったところ…、そうです。そこにはカツラを被った佐田先生が…!「なるほど〜」と思いましたね。確かに現実でもカツラだったら「被っているものを脱げ!」とは直ちに注意を受けないでしょうし、うまく変装もできます(もちろんバレバレのカツラはダメだと思いますが笑)。必ずしもすべてが書かれているわけではない台本を実際に映像にしていく、という作業において、いかに面白いアイディアや工夫を凝らすか。傍で見ていて『99.9』の制作スタッフの皆さんは、本当に手を抜かず、常にベストを尽くそうと努力されているのがよく分かる場面でした。
写真 あと、第3話では物語のターニングポイントとして、石川敦子(安達祐実さん)を病院で尋問するシーンが出てきました。「裁判所の外で裁判なんてできるの?」と思われた方もいると思います。これは正式には「所在地尋問」といって、法律で認められた現実にもある方法です。「証人の重要性、年齢、職業、健康状態その他の事情と事実の軽重とを考慮した上」で裁判所が認めれば実施されます。石川は被害者であり、検察側にとっても弁護側にとっても、超重要な証人です。しかし、彼女はまだ入院中で、絶対安静の身。裁判所に呼んで尋問しようとしたら何か月先になるか分かりません。なので、所在地尋問という方法が選択されたわけです。ちなみにもう一つ。裁判員がいないことに気が付きましたか?ちょっと細かい知識ですが、所在地尋問は裁判所の外で証人が話したこと(裁判官や弁護人・検察官が聞いたこと)を、いわゆる「調書(紙)」にまとめ、その調書を後日改めて裁判の場で証拠として確認する、という手続きです。つまり、裁判そのものではないんです。なので、あくまで「裁判」に立ち会う裁判員はあの場面には登場しなかったんですね。ドラマの進行には直接関係のないことですが…(笑)、人知れずそういったところもできるだけリアルに近づけようとこだわって作っているんですよ。

Q2.26年も前の事件、犯人を捕まえても時効なのでは?

第2話をご覧になった皆様、いかがでしたでしょうか。前作では謎のままで終わってしまった深山のお父さんの事件の真相が、何年もの時を経て、ようやく明らかになりましたね。最高の形で、というわけではありませんでしたが、深山が少しでも救われてよかったです。
 さて、2話は26年前の事件ということで、いわゆる「時効」の問題が生じます。刑事モノのドラマ等で「時効まであと少ししかない!全力で犯人を見つけ出すんだ!」的な展開を目にしたことはありませんか?アレです。知っているようで知らないこの「時効」について、ストーリーをもとに簡単に解説しましょう(ちょっとマニアック過ぎ…?笑)
写真 まず、時効(正確には「公訴時効」といいます。)とは、簡単に言えば「発生から一定期間経過した事件については、刑事裁判が開けない(起訴ができない)」という制度のことです。深山のお父さんの事件は26年も前(劇中を2017年の夏頃と仮定すると、1991年)ですから、真犯人を見つけても時効なんじゃないの?という疑問が出てきてしまいます(舞子も同じことを深山に指摘していましたね。)。

ここで第1のポイントとなるのは、佐田の「小倉は事件のあと海外に移住している」というセリフ。実は、法律では時効のカウントが途中でストップする事例がいくつか定められていて、犯人が国外にいるケースはその一つにあたるんです。例えば1年間国外にいた場合は、その人に関しては、その分、時効成立が1年遅れる、という感じになります。したがって、仮に26年が経過していても、小倉が海外に移住している期間が長ければ長いほど、その分時効が完成していない可能性が高まる、ということになるわけです。
さて、ここまで読んで時効制度について勉強したことがある人は、あれれ?となるかも知れません。そうです、「殺人罪」の時効は法改正によって廃止、つまり現在、殺人は時効制度そのものが存在しない(逃げられないことになった)んです。だったら、海外に移住とか、もうそんなこといちいち調べる必要ないんじゃないの?ということになりそうです。 写真 ここで第2のポイントとなるのは、「法改正の時期」。殺人罪の時効が廃止されたのは2010年、つまり、事件発生(1991年)から、当時の殺人の時効期間15年が経過した後に法改正がされました。このような場合、既に一度成立した時効が改正によってなかったことになる、ということにはならないんです。後から法改正があったからといって、当時の法律を正しく適用してできあがった状態をひっくり返してしまうと、その状態をもとにその後起こった全部の出来事に影響を与えてしまいます。その事件で裁判にかけられる人はもちろん、思わぬところで新たに不利益を受ける人が出てきたりするなど、社会が不安定になってしまいますよね。したがって、小倉についても、もし「時効が成立した後に法改正があった」のであれば、法改正の影響を受けず、もはや刑事裁判にかけることができなくなるわけです。
一方、小倉が事件後4〜5年以上海外に移住していれば、「時効が成立する前に法改正があった」ことになりますので、改正後の法律が適用され、「殺人の時効廃止=起訴が可能」という結論になります。だからこそ、佐田は「必ず小倉を見つけ出して真相を明らかにする!」と大友検事に宣言したんですね。いやはや、こんな上司うらやましいです(笑)

Q1.戻ってきた99.9-刑事専門弁護士-、QQ.Qも晴れて再開です!

99.9−刑事専門弁護士−SEASONをご覧の皆様、どうも初めまして!(前作から引き続きご覧の皆様はお久しぶりです!)
前作に続き、SEASONでも全体の法律監修を担当させていただくことになりました、弁護士の國松崇と申します。ありがたいことに、この「弁護士豆知識QQ.Q」のコーナーについてもSEASONに合わせて再開させていただくことになりました!
ここでは、専門的でやや分かりづらい刑事裁判の仕組みやそれに関わる法律・ルールなど(時には裏話も…!?)を、作品をより広く・深く楽しんでいただくために、できる限り紹介させていただきたいなと思っています。ドラマやこのコーナーを通じて、少しでも弁護士(もちろん裁判官や検事も)という職業に興味を持つ人が増えたら嬉しいです。
写真 さて、さっそくですが、第一話はいかがでしたでしょうか?
今作では、裁判官を辞めてしまった尾崎舞子弁護士(木村文乃さん)が新たに登場しました。なぜ彼女が若くして裁判官を辞めてしまったのか、とても気になりますね。裁判官を辞める理由は人それぞれですが、裁判官を辞めた後のキャリアの一つとして、実は弁護士になる人が相当数います(弁護士会に登録さえすれば、その日から弁護士を名乗れます。)
ただ、同じく法律を扱う職業ではありますが、裁判官と弁護士の仕事や立場は全く違います。どうやったらうまく証拠を集められるのか、どうやったらうまく示談交渉ができるのか、どうやったら依頼者に信頼してもらえるのか…、などなど、これらは弁護士であれば誰もが日々苦労しながら工夫を重ねている場面です。しかし、裁判官はあくまで裁判における「判断」が仕事ですから、必ずしも法廷に出てこないそういった苦労が、非常に見えづらい立場にいます。したがって、たとえ超ベテラン裁判官であっても、弁護士としては、また一からそういった経験を積んでいかなくてはならないというわけです。あとは、公務員である裁判官と違って、弁護士は仕事がなければ食っていけない、というのも大きな違いですね(笑)。果たして舞子はこれからどのように斑目法律事務所の面々と関わり合っていくのか。今後の展開が楽しみですね!

弁護士 國松 崇

写真 元TBS社員弁護士。現在は東京リベルテ法律事務所に所属し、主にエンターテインメント分野の取引法務や訴訟対応等を中心に、多くの企業・個人に対し、幅広くリーガルサービスを提供している。また、刑事弁護人としての活動も引き続き精力的に行っている。前作に続き,SEASONでも脚本作りや法廷シーンの演出などで全体の監修を担当。

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